「際し」とは?意味や読み方、使い方と「際して」との違いを徹底解説

「開会に際し、ひとことご挨拶申し上げます」——式典の挨拶やあらたまった案内文で、こうした「際し」という言葉を目にしたことはありませんか。読み方は「さいし」。日常会話ではあまり使わないぶん、いざ書こうとすると「際し」なのか「際して」なのか、送り仮名で迷う人も少なくありません。この機会に、意味と使い方をすっきり整理してみましょう。

際しとは?際しの意味

動詞「際する」の連用形で、「ちょうどそのときに」「その機会にあたって」という意味を改まって表す書き言葉。「〜に際し」「〜に際して」の形で、特別な出来事や節目に添えて用いられます。

際しの説明

「際し」は、「あるものごとがおこなわれる、まさにそのときにあたって」という意味を表す動詞「際する」の連用形です。読み方は「さいし」で、多くの場合「入学に際し」「開催に際し」のように、名詞+「に」を受けて「〜に際し」という形で使われます。式典や行事、契約、赴任、退職といった人生や仕事の節目を示す語と結びつきやすく、その場面に添えて挨拶や注意事項を述べるときの前置きとして機能します。話し言葉ではほとんど使われず、案内状・挨拶文・契約書・社内通知といった、あらたまった書き言葉の中で見かけることが多い表現です。会話では「〜のときに」「〜にあたって」と言い換えるのが自然です。

「際し」は、節目のあらたまった気持ちをそっと一語に込める前置きですね。読み方と送り仮名を押さえておけば、挨拶文や案内状でも落ち着いて使えます。

際しの由来・語源

「際」という字は、もともと「きわ」「境目」を表し、二つのものが接するところ、あるいは「ちょうどその時」を指す語として古くから使われてきました。「窓際」「間際」「今際(いまわ)」などにその名残が見られます。この「際」に「する」を付けて動詞化したものが「際する」で、「ちょうどその場面に居あわせる」「その時にあたる」という意味を表します。その連用形が「際し」です。「〜に際し」という言い回しは、こうした「きわ・境目」の語感を背景に、ものごとの節目という『特別な時点』を丁寧に示す表現として定着してきたと考えられます。具体的な故事に由来するというより、漢語的な語構成から自然に広まった書き言葉と位置づけられます。

たった一語の送り仮名に、文体の硬さや文のリズムがちゃんと表れているのが面白いですね。「際し」と「際して」を意識して選べると、文章の印象をぐっと調整できます。

際しの豆知識

「際し」でよく話題になるのが、「際し」と「際して」のどちらを使うかという送り仮名の問題です。結論から言えば、両方とも正しく、意味に大きな違いはありません。文を途中でいったん区切って次へつなぐときは「際し、」と連用中止の形にすると引き締まり、「〜して、」とやわらげたいときや口調をなめらかにしたいときは「際して」が選ばれやすいとされます。あらたまった挨拶文や公式文書では「際し」、やや柔らかい案内文では「際して」が好まれる傾向がある、と説明されることが多いようです。とはいえ絶対的な決まりではなく、書き手の語感や文全体のリズムによって使い分けられています。

際しのエピソード・逸話

新社会人が入社式の日、上司から「入社に際し、心構えを一言」と原稿を頼まれ、「入社にさいして、ですか?」と読み方を確かめた——といった場面は、あちこちで耳にします。「際し」は目にする機会こそ多いものの、声に出す習慣がないため、いざ読もうとすると一瞬詰まってしまう、という人は珍しくないようです。ビジネスの現場でも、「契約締結に際し、以下の点にご留意ください」「新店舗開店に際し、ささやかな記念品をご用意しました」といった定型句として登場し、節目のフォーマルな一文を作る潤滑油として機能していると言われます。

際しの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「際し」は動詞「際する」の連用形が、後続の文へつなぐ『連用中止法』として働いている点が特徴です。「開会に際し、挨拶する」は、「開会に際して、挨拶する」の「て」を省いて文を引き締めた形と捉えられ、連用中止は書き言葉、とりわけ改まった文体でよく用いられる文法現象です。また「〜に際し」は、名詞句を受けて「その時点・その機会」という時間的な状況を導く、いわゆる後置詞的な機能を担っています。同種の表現に「〜にあたり/にあたって」「〜に当たって」があり、これらと近い意味領域を持ちながら、「際し」のほうがやや硬く儀礼的な語感を帯びる、という文体(レジスター)差が見られる点も興味深いところです。

際しの例文

  • 1 開会に際し、ひとことご挨拶を申し上げます。
  • 2 このたびの創立十周年に際し、日頃のご愛顧に心より御礼申し上げます。
  • 3 ご契約に際しては、以下の重要事項説明書を必ずお読みください。
  • 4 新プロジェクトの発足に際し、関係各位のいっそうのご協力をお願いいたします。
  • 5 退職に際し、長年にわたり支えてくださった皆さまへ感謝を申し上げます。

「際し」が使われる主な場面と注意点

「際し」は、式典・行事・契約・人事など、あらたまった節目に添えて使う書き言葉です。挨拶状や案内文の書き出し、契約書や社内通知の前置きとして登場することが多く、その一文があるだけで文章全体が引き締まった印象になります。一方で、日常的な連絡やくだけたメールで多用すると堅苦しくなりすぎるため、場面を選んで使うことが大切です。

  • 式典・行事の挨拶(「開会に際し」「閉会に際し」)
  • 節目の御礼・案内(「創立◯周年に際し」「開店に際し」)
  • 契約・手続きの前置き(「ご契約に際しては」「お申し込みに際し」)
  • 人事の挨拶(「就任に際し」「退職に際し」)
  • 話し言葉では「〜のときに」「〜にあたって」と言い換える

「際し」と近い表現の比較

「際し」を理解するうえで役立つのが、似た意味を持つ表現との比較です。いずれも「その機会・その時点にあって」という状況を導きますが、あらたまり具合や使われる場面に微妙な差があります。下の表は一般的な傾向を整理したもので、絶対的な決まりではなく目安として捉えてください。

表現語感・あらたまり使われやすい場面
〜に際し 硬く儀礼的 式典の挨拶、公式文書、あらたまった挨拶状
〜に際し やや柔らかい 案内文、社内通知など読み手に配慮した文面
〜にあたり/にあたって 改まりつつ平易 式辞、社内文書、幅広いビジネス文書
〜のときに 口語的 日常会話、くだけたメールや連絡

実際の文章では、文全体の硬さや読み手との距離感に合わせて選ぶのがコツです。最上位のあらたまった挨拶では「際し」、少し柔らかくしたいときは「際して」や「にあたり」を使うと、無理のない自然な文面になります。

「際し」を使うときのポイント

「際し」を上手に使うには、いくつかの押さえどころがあります。とくに送り仮名と組み合わせる語、そして使いすぎに注意すると、文章がぐっと読みやすくなります。以下では、挨拶文や案内文を書くときに意識したいポイントを順に挙げます。

  1. 改まった書き言葉であることを意識し、くだけた連絡では使わない
  2. 「際し」と「際して」は文のリズムや硬さに合わせて選ぶ
  3. 「入学」「契約」「就任」など、節目を示す名詞と組み合わせる
  4. 一つの文章で何度も繰り返さず、要所に絞って使う
  5. 声に出す場面では「さいし」と落ち着いて読む

近年は、案内文やメールでもできるだけ平易な表現が好まれる傾向があります。すべてを「際し」で固めるのではなく、伝統的な「〜に際し」と、より読みやすい「〜のときに」「〜にあたって」を場面に応じて使い分けることが、現代のビジネス・日常コミュニケーションでは大切と言えるでしょう。

よくある質問(FAQ)

「際し」は何と読みますか?

「さいし」と読みます。動詞「際する(さいする)」の連用形で、「際」を「さい」、送り仮名の「し」を「し」と読みます。読み自体は難しくありませんが、話し言葉ではあまり使わないため、初めて声に出すときに戸惑う方もいるようです。

「際し」と「際して」はどちらが正しいですか?

どちらも正しく、意味に大きな違いはありません。文をいったん区切って次へつなぐ改まった書き方では「際し、」が、口調をなめらかにしたいときや柔らかい案内文では「際して」が選ばれやすいとされています。公式文書や挨拶文では「際し」、やや柔らかい文面では「際して」と、文体に合わせて使い分けるとよいでしょう。

「際し」と「にあたり」「にあたって」はどう違いますか?

いずれも「その機会・その時点にあって」という近い意味を持ちますが、「際し」のほうがやや硬く儀礼的な語感があるとされます。式典の挨拶や公式文書では「開会に際し」、社内向けのやや平易な文面では「開始にあたり」といったように、文章のあらたまり具合に応じて選ぶと自然にまとまります。

「際し」は話し言葉でも使えますか?

「際し」は基本的に書き言葉で、日常会話ではほとんど使いません。会話では「〜のときに」「〜にあたって」と言い換えるのが自然です。スピーチなど改まった場面で口にすることはありますが、その場合も原稿を読み上げる形が多く、くだけた会話にはなじみにくい表現です。

「際し」はどんな言葉と組み合わせて使いますか?

「入学」「入社」「開会」「開催」「契約」「就任」「退職」など、節目や特別な出来事を表す名詞と結びつけて「〜に際し」の形で使うのが一般的です。日常的なありふれた行為よりも、あらたまった機会や公式な場面を示す語と組み合わせると自然です。