行ってもらうとは?行ってもらうの意味
「行ってもらう」とは、相手に何らかの場所へ移動するよう依頼・要請する際に使われる表現。「行く」の連用形「行っ」に助詞「て」、補助動詞「もらう」が組み合わさった形で、「〜してもらう」という恩恵表現の一種である。単なる移動の指示ではなく、依頼者側がその行為によって利益を受けるニュアンスが含まれる。
行ってもらうの説明
「行ってもらう」は、日本語の授受動詞「もらう」を用いた恩恵表現の一つで、相手に何らかの場所へ行くよう依頼・要請する際に用いられる。文法構造としては、「行く」(五段動詞)のテ形「行って」に補助動詞「もらう」が接続した形である。この表現の特徴は、行為の主体(行く人)が利益を受けるのではなく、依頼した側(話し手)がその行為によって利益や恩恵を受けると捉える点にある。 敬語の観点では、「行ってもらう」は「行ってください」よりも柔らかい依頼表現とされるが、「行っていただく」と比較すると丁寧さはやや低い。一般的に、上司や取引先など目上の人に対しては「行っていただく」や「お越しいただく」が推奨され、「行ってもらう」は同僚や部下といった対等または目下の相手に使われることが多い。 なお、「行ってもらう」は話し言葉として自然な響きを持つ一方、改まったビジネス文書や公式な場面では「行っていただく」への言い換えが望ましいとされる。
「行ってもらう」は話し言葉での使用頻度が高く、ビジネスでも比較的カジュアルな場面でよく使われる。丁寧さの度合いを意識して使い分けることが大切である。
行ってもらうの由来・語源
「行ってもらう」の起源は、古代日本語の「行く」と「貰ふ(もらふ)」の複合表現に遡る。「もらふ」は「受ける」「受け取る」を意味する動詞で、平安時代には「笑はせてもらう」のように「〜してもらう」の形で恩恵表現として使われ始めたとされる。現代日本語では「行ってもらう」が一つの定型的な依頼表現として定着しているが、その背後には「行為を受け取る」という授受動詞本来の意味が残っている。
「行ってもらう」のような授受表現は日本語学習者にとって習得が難しい項目の一つとされる。視点と恩恵の方向性を同時に考慮する必要があるためである。
行ってもらうの豆知識
「行ってもらう」をさらに丁寧にした「行っていただく」に含まれる「いただく」は、漢字で「頂く」と書く。「頂く」の原義は「頭の上に載せる」であり、そこから「恭しく受ける」という意味が生まれたとされる。「もらう」の謙譲語である「いただく」を使うことで、相手の行為をより高い位置から受けるという敬意表現が成立する。
行ってもらうのエピソード・逸話
実際のビジネス現場では、「行ってもらう」という表現は上司から部下への指示として使われるのが典型的である。例えば「悪いけど、この書類をお客様のところまで行ってもらえる?」といった形で、命令調を避けつつ依頼の意思を伝える言い方として機能する。一方で、目上の人に対して「行ってもらう」と使うことはできるが、敬語としては不十分とされる場合が多く、「行っていただく」が推奨される。日本語の敬語運用の難しさを象徴する表現の一つと言える。
行ってもらうの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「行ってもらう」は日本語の受益態(benefactive)構文の一種である。日本語の受益態は「〜してもらう」「〜してくれる」「〜してあげる」の三系列があり、それぞれ行為の方向性と恩恵の受け手が異なる。「行ってもらう」では、行為者(行く人)に行為を依頼した話し手側に視点が置かれ、話し手が恩恵を受ける構文となる。この視点の取り方は日本語の特徴的な現象であり、英語などの欧米語には直接対応する文法カテゴリがないとされる。
行ってもらうの例文
- 1 「この書類を本社まで届けてほしいので、山田さんに行ってもらうことにした」
- 2 「来週の展示会には、営業部の田中さんに行ってもらう予定です」
- 3 「わざわざ遠くまで行ってもらうのは申し訳ないが、どうかよろしくお願いします」
- 4 「お客様のところへは私から行ってもらうよう手配しておきます」
- 5 「現地の状況確認は、やはり専門スタッフに行ってもらうのが確実だ」
類似表現との違い
「行ってもらう」にはいくつかの類似表現があり、敬語の種類や丁寧さ、使用する場面が異なります。以下の表でそれぞれの特徴を比較します。
| 表現 | 敬語の種類 | 主な使用場面 | 丁寧さ |
|---|---|---|---|
| 行け | 命令形(敬語なし) | 親しい間柄・緊急時 | 低い |
| 行ってください | 尊敬語(依頼) | 上司・目上にも使える依頼 | やや高い |
| 行ってもらう | 授受表現(恩恵) | 同僚・部下への依頼や指示 | 中程度 |
| 行っていただく | 謙譲語(丁寧) | 取引先・上司への依頼 | 高い |
| お越しいただく | 謙譲語(最敬語) | 公式文書・改まった場面 | 非常に高い |
シーン別の適切な使い分け
「行ってもらう」とその類似表現は、相手との関係性や場面によって適切に使い分ける必要があります。以下の基準を参考にするとよいでしょう。
- 上司・取引先への正式な依頼:「行っていただく」または「お越しいただく」を使う。例:「次回は本社までお越しいただく形になります」
- 同僚への軽い依頼:「行ってもらう」が自然。例:「悪いけど、代わりに行ってもらえる?」
- 部下への指示:「行ってもらう」が適切。命令形より柔らかく伝わる。例:「この書類を郵便局まで行ってもらえますか」
- 親しい友人への依頼:「行ってくれる」が自然。堅苦しさがなく好印象。例:「代わりに行ってくれない?」
- メールや文書での依頼:「行っていただく」または「ご足労いただく」など、より丁寧な表現が推奨される
間違えやすいポイント
「行ってもらう」の使用で間違えやすい点をいくつか紹介します。適切な敬語運用のために注意しましょう。
- 「行ってもらう」を目上の人に使うのは避ける:「部長に行ってもらいます」ではなく「部長にお越しいただきます」と言い換える
- 「行かせてもらう」との混同に注意:「行かせてもらう」は自分が行く許可を得る意味で、相手に行かせる意味にはならない
- 「行ってもらう」は書き言葉より話し言葉向き:改まった文書では「行っていただく」を選ぶ
- 「行って頂く」と漢字表記する場合もあるが、「いただく」は補助動詞のため、一般的にはひらがな表記が推奨される
- 「行ってもらう」にさらに「ください」を重ねる「行ってもらってください」は二重表現で不自然。「行っていただく」で十分
よくある質問(FAQ)
「行ってもらう」と「行っていただく」の違いは?
「行ってもらう」の「もらう」を謙譲語「いただく」に変えたものが「行っていただく」です。「行っていただく」の方がより丁寧な表現で、取引先や上司など目上の人に対して使うのに適しています。一方「行ってもらう」は同僚や部下に対して使われることが多い、ややカジュアルな表現です。
「行ってもらう」は敬語として正しいのでしょうか?
「行ってもらう」は「行く」に「もらう」を組み合わせた表現で、「もらう」自体が丁寧なニュアンスを持つため、完全なタメ口よりは丁寧です。ただし、厳密な敬語分類では尊敬語や謙譲語ではなく、授受表現(恩恵表現)に分類されます。より改まった場面では「行っていただく」(謙譲語)を使うのが適切とされます。
目上の人に「行ってもらう」を使っても良いですか?
目上の人に対して「行ってもらう」を使うのは避けたほうが無難です。「行ってもらう」は行為を依頼する側が恩恵を受ける構文ですが、目上の人に対しては「行っていただく」や「お越しいただく」など、より敬意の高い表現が推奨されます。例えば「部長に本社まで行ってもらう」よりも「部長に本社までお越しいただく」の方が適切です。
「行ってもらう」と「行ってくれる」の違いは何ですか?
両者の大きな違いは、視点と恩恵の方向にあります。「行ってもらう」は依頼者が「相手に行ってほしいと頼む」立場で、依頼者が恩恵を受けるニュアンスを持ちます。一方「行ってくれる」は「相手が進んで行う」ニュアンスが強く、相手の自発的な行為に対する感謝の気持ちを表す場合に使われます。依頼の意味を明確に伝えたい場合は「行ってもらう」が適しています。
ビジネスメールでの「行ってもらう」の適切な使い方は?
ビジネスメールの本文では「行っていただく」を使うのが一般的です。例えば「ご担当者様に現地までお越しいただく形になります」のように、より丁寧な表現を選びます。ただし、社内メールや比較的カジュアルなやり取りであれば「行ってもらう」も許容されます。社外文書では原則として「行っていただく」「お越しいただく」を使用するとよいでしょう。