やらせていただくとは?やらせていただくの意味
動詞「やる」に使役の助動詞「せる」と謙譲の補助動詞「いただく」が組み合わさった表現で、「相手の許可や好意のもとで自分が行う」というニュアンスを丁寧に伝えようとする言い回しです。
やらせていただくの説明
「やらせていただく」は、「やる」+「させる」+「もらう」の謙譲形「いただく」が連なった構造を持つ敬語表現です。本来は「相手の許可を得て」「相手の恩恵を受けて」自分が何かを行う場面で用いるのが筋ですが、現代では単に行為を丁寧に述べたい意図で広く使われています。「やる」自体がやや砕けた響きを持つ動詞であるため、改まった場では「いたします」「務めさせていただきます」「担当いたします」などに置き換えるほうが落ち着きのある印象になります。文化庁の「敬語の指針」では、許可や恩恵の要素が薄いのに「させていただく」を多用する傾向が過剰敬語として指摘されており、「やらせていただく」もその典型例として議論されることが少なくありません。
便利でつい口をついて出る言葉ですが、相手や場面に合わせて言い換えを使い分けると、文章全体がぐっと締まって見えますよ。
やらせていただくの由来・語源
「やらせていただく」は、動詞「やる」、使役の助動詞「せる」(「やる」+「せる」で「やらせる」)、接続助詞「て」、補助動詞「いただく」(「もらう」の謙譲語)が組み合わさってできた表現です。「いただく」は元来、相手から物や行為を頂戴することを表す謙譲語で、そこから「相手の許可をいただいて自分が行う」というニュアンスが派生しました。「させていただく」型の言い回しは関西方面で古くから商売の現場を中心に使われていたとされ、テレビや全国規模の企業活動を通じて昭和後期以降に標準語圏にも広く浸透していったと言われています。
敬語の構造を一つひとつ分解してみると、「丁寧さ」を盛れば盛るほど良いわけではないことが見えてきますね。
やらせていただくの豆知識
文化庁が2007年に公表した「敬語の指針」では、「させていただく」が適切に使えるのは「相手側または第三者の許可を受けて行う」場合と「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがある」場合の双方が満たされるときだと整理されています。「やらせていただく」もこの枠組みに当てはまるかが判定基準になります。たとえば自分の判断だけで完結する事柄に対して「やらせていただきます」と述べると、本来許可を求める必要がない相手にまで許可を仰いでいるように響き、過剰敬語と捉えられることがあります。一方、依頼を受けて引き受ける場面など、許可と恩恵の双方が成立する状況では自然な表現として機能します。
やらせていただくのエピソード・逸話
就職活動の自己PRや面接の場で「ぜひ御社で営業をやらせていただきたいです」と語る学生は少なくありません。意気込みを伝えるための言い回しとして広く定着していますが、人事担当者の中には「やる」の砕けた響きを気にして、より落ち着いた「携わりたい」「お力添えしたい」「担当させていただきたい」に置き換えるよう助言する人もいるとされます。また、結婚式の司会やイベント進行の場面でも「本日司会をやらせていただきます○○です」と挨拶するケースが目立ち、テレビ番組などでも頻繁に耳にする言い回しになりました。
やらせていただくの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「やらせていただく」は使役助動詞「せる」と謙譲補助動詞「いただく」を重ねた多層構造の敬語であり、いわゆる「敬語の重ね使い」の典型例として議論されてきました。動詞「やる」自体は中立から砕けた語感を持つため、その上に重い敬語層を載せることで語感の不均衡が生じやすく、結果として「言葉だけ丁寧で実質が伴わない」と評されることもあります。社会言語学の観点からは、話し手が責任やリスクを和らげる「クッション機能」として「させていただく」型を選んでいる側面も指摘されており、自己決定の表現を婉曲化する現代日本語の傾向を映す例として研究対象になっています。
やらせていただくの例文
- 1 本日司会をやらせていただきます、企画部の佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
- 2 このたびのプロジェクトでは、進行管理を私がやらせていただくことになりました。
- 3 ぜひ一度、御社の新サービスのご紹介を私からやらせていただけませんでしょうか。
- 4 恐れ入りますが、本日の発表は時間の都合で要点を絞ってやらせていただきます。
- 5 せっかくのお話ですので、ありがたくやらせていただきたいと存じます。
「やらせていただく」が違和感を与えやすい場面
「やらせていただく」は、本来「相手の許可」と「自分が受ける恩恵」の双方が前提となる表現です。しかし実際の会話では、自分の意思だけで決まる事柄に対しても用いられることが多く、相手によっては『そこまで丁寧に許可を仰がなくてもよいのに』と感じさせる場合があります。とくに動詞『やる』の砕けた響きと、重い敬語層との落差が違和感の原因になりやすいポイントです。
- 自分の業務範囲内のことを述べる場面
- 相手の許可がそもそも必要ない場面
- 同じ文章内で何度も繰り返してしまう場合
- 「やる」の砕けた語感が場の格式に合わない場面
- 目上の相手に対して語気を強めて述べる場面
シーン別の言い換え表現
「やらせていただく」の代わりに使える表現は、状況やニュアンスによってさまざまです。許可や恩恵の重みがある場面では「させていただく」系を、自分の責任で進める場面では「いたします」系を選ぶと、敬語のバランスが整いやすくなります。
| シーン | 言い換え例 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 司会・進行役を引き受けるとき | 司会を務めさせていただきます | 役を任された敬意と謙譲を両立 |
| 業務を担当する旨を伝えるとき | 担当いたします / 担当させていただきます | 業務範囲を明示しつつ落ち着いた印象 |
| 依頼を引き受けるとき | お引き受けいたします | 受諾の意思をすっきりと伝える |
| 意欲を伝えるとき | ぜひ携わらせていただきたく存じます | 前向きな姿勢を丁寧に表現 |
| 作業を進める旨を伝えるとき | 進めてまいります / 対応いたします | 余計な許可表現を省き簡潔に |
文化庁「敬語の指針」が示すポイント
文化庁文化審議会答申「敬語の指針」(2007年)では、敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5分類で整理し、「させていただく」型の表現についても具体的な判定基準を示しています。それによると、この表現が自然に成立するためには『相手側の許可を受けて行う』ことと『そのことで自分が恩恵を受けるという事実や気持ちがある』ことの両方が満たされている必要があるとされます。
- 相手の許可を受けて行う行為であること
- 自分が恩恵を受けると感じられる行為であること
- 両方の条件が薄い場合は『いたします』に置き換えるほうが自然
- 敬語を重ねるほど丁寧になるわけではないと理解すること
- 場面と相手に合わせて表現を選び分ける意識を持つこと
つまり「やらせていただく」を使うかどうかは、許可と恩恵の有無を意識して判断するのが基本です。条件が揃っていない場面では、「いたします」「務めます」「担当いたします」など、よりすっきりとした敬語を選ぶことで、相手に伝わる丁寧さと自分の意思の明確さを両立させることができます。
よくある質問(FAQ)
「やらせていただく」と「させていただく」はどう違いますか?
意味としてはほぼ同じで、「やる」を改まった形にしたのが「させていただく」です。ただし「やる」は語感がやや砕けるため、ビジネス文書や改まった場では「させていただく」あるいは「いたします」のほうが落ち着いた印象になります。
「やらせていただく」は敬語として間違いですか?
文法的に誤りとまでは言えませんが、文化庁「敬語の指針」では「させていただく」型の表現は『相手の許可を受け』『自分が恩恵を受ける』という2条件が揃って初めて自然だとされています。これらの条件が薄い場面で多用すると、過剰敬語と感じられることがあります。
「やらせていただきます」の言い換えにはどんな表現がありますか?
場面に応じて「担当いたします」「務めさせていただきます」「お引き受けいたします」「進めてまいります」などに置き換えられます。許可を仰ぐ必要がない場合は、思い切って「いたします」と短く言い切るほうがすっきりと伝わります。
「ぜひやらせてください」はビジネスでも使えますか?
意欲を伝える表現として通じますが、ややカジュアルな印象があります。改まった場面では「ぜひお任せいただけますでしょうか」「ぜひ担当させていただきたく存じます」と言い換えると、より落ち着いた敬意ある印象になります。
メールで「やらせていただきます」を使うときの注意点は?
重ねて使うと文章全体がくどくなるため、本文中で何度も登場しないように調整しましょう。また、書き言葉では「やる」よりも「行う」「実施する」「担当する」のほうが文体が整いやすく、相手に与える印象も引き締まります。