「急遽」とは?
「急遽」は、(きゅうきょ)と読みます。「急」は、「急に・急ぐ」という意味で広く知られていますね。他方「遽」は、読み方も字義も分かりづらいと感じるかもしれません。
「遽」は、音読みで「キョ」、訓読みで「にわ-か、すみ-やか、あわただ-しい、おそ-れる」などと読みます。訓読みは、馴染みのある言葉が並びますね。意味は複数ありますが、「急遽」においては、差し迫ってあわてることを表します。
したがって、「急遽」には以下のような意味があります。
- (形容動詞)急に物事が行われるさま。
- (副詞)にわかに。急いであわてるさま。あわただしく事を行うさま。
「急遽」の使い方
「急遽」は、現在は副詞として用いることがほとんどでしょう。使い方のポイントは、「急ぐ」だけではないことです。あるできごとや状況が「予定外」であること、「突然」であることが背景にあります。その結果、「あわてる」という意味も含まれることになります。
スピードについて表す部分が「急」ですが、「遽」の字義に含まれる「あわてる」「あわただしい」という意味合いをしっかり把握して用いることが大切です。
とるものもとりあえず、という差し迫った場面、思ってもいなかったことをあわててやるはめになった、などの場面に用いると、より状況をわかりやすく伝えることができます。
文例
- 見たことのない飛行物体が上空に現れ、驚愕した村人たちは急遽避難をはじめた。
- 社長が闇カジノに通っているというスクープが週刊誌に出て、広報は急遽マスコミへの対応に追われた。
- 急遽、諸般の事情によりライブの開催を延期とさせて頂くことになりました。
- 急遽出張が入ってしまったので、週末の飲み会は欠席させてもらうよ。
「急遽」の類語・類似表現
「突然」
「突然(とつぜん)」とは、予期していないことが急におこること、だしぬけであることを表す言葉です。
予定外に急に、という意味がある点で「急遽」の類語たりえますが、「あわてて」「あわただしく」という意味はもちません。単にいきなり、というニュアンスの言葉ですので、「急遽避難する」と言えても、「突然避難する」は不自然ですね。
反対に、「突然楽しげに歌いだす」と言えても、「急遽楽しげに歌いだす」は不自然です。ふいに楽しく歌いだすことはあっても、あわてて楽しく歌いだすことはありません。
文例:突然、ビルの看板が歩道の上に落ちてきた。
「唐突に」
「唐突(とうとつ)に」は、だしぬけに、突然、不意にという意味において「急遽」の類語たりえますが、「あわてて」という意味はありません。
文例:くつろいで報告書を読んでいた部長が唐突に大声で課長を呼び立て、課内に緊張が走った。
「おっとり刀で」
「おっとり刀(がたな)で」とは、急いで、すぐに、という意味です。「押っ取り刀で」とも表記します。あわただしく、あわてて、というニュアンスも含まれるため、「急遽」と近い類語表現です。
急な出来事に刀を腰に差すこともままならず手に持ったままでという由来から、ほぼ「おっとり刀で駆けつける」という表現でのみ用いられます。
「押っ取り」は、急いで手に取る、という意味をもちますが、「おっとり」と表記されることが多いでしょう。このことから、本来の意味とは逆に、おっとりのんびり、と誤解されることがきわめて多い言い回しです。
文例:発注ミスをしでかしたって?仕方ないな、おっとり刀で駆けつけるよ。