諸手とは?諸手の意味
左右両方の手、つまり両手を指す言葉です。
諸手の説明
「諸手」は「もろて」と読み、文字通り左右両方の手を意味します。現代では「両手」とほぼ同じ意味で使われていますが、古語では「もろもろの軍隊」という意味もありました。また、「諸手を挙げて」という慣用句では、心から歓迎したり無条件に賛成したりする様子を表します。これは両手を挙げて歓迎する動作に由来していると考えられます。読み方としては「もろて」が基本ですが、地域によっては「もろで」と濁る場合もあり、島根県の美保神社に伝わる「諸手船神事」では「もろた」と発音されるなど、バリエーションがある点も興味深いですね。
両手を表す「諸手」という言葉、日常的には「両手」の方がよく使われますが、慣用句として生き残っているところが日本語の面白さですね!
諸手の由来・語源
「諸手」の語源は古語の「諸(もろ)」に由来します。「諸」は「両方の」「複数の」という意味を持ち、これに「手」が組み合わさって「両手」を表す言葉となりました。平安時代の文献にも登場する古い言葉で、当初は文字通り両手を指すだけでなく、複数の人の手や協力という意味合いでも使われていました。中世になると武家社会で「諸手」が戦術用語としても用いられるようになり、両手で刀を扱う技法や、複数の兵士による共同作業を指すようになりました。
古くから使われてきた「諸手」という言葉、現代でも慣用句としてしっかり生き残っているところが日本語の豊かさを感じさせますね!
諸手の豆知識
「諸手」にまつわる興味深い豆知識として、島根県松江市の美保神社で行われる「諸手船神事」があります。ここでの「諸手」は「もろた」と読み、古い発音を残している貴重な例です。また、相撲の世界では「諸手突き」という技があり、両手で相手を突く動作を指します。さらに面白いのは、現代ではあまり使われませんが、「諸手」には「もろもろの手段」という意味もあり、多様な方法や手段を表す場合もあるということです。
諸手のエピソード・逸話
作家の司馬遼太郎さんは、その著作の中で戦国時代の武将について「諸手を挙げて賛成する」という表現をよく用いていました。特に武田信玄のエピソードでは、家臣団が信玄の提案に「諸手を挙げて同意した」と描写し、団結力の強さを表現しています。また、歌手の美空ひばりさんは、コンサートで熱心なファンが「諸手を挙げて拍手する」様子を見て、「観客の皆さんが諸手を挙げて迎えてくれるのが何よりの幸せ」と語ったという逸話が残っています。
諸手の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「諸手」は日本語の複合語形成の典型的な例です。修飾要素「諸」が被修飾要素「手」にかかる構造で、このような漢語系複合語は平安時代から増加しました。興味深いのは、「諸」が和語の「もろ」として機能している点で、漢字の意味と訓読みが融合した例と言えます。また、「諸手」と「両手」の使い分けは、日本語の類義語の微妙なニュアンスの違いを示しており、「諸手」がやや文語的・慣用的な表現であるのに対し、「両手」はより日常的で一般的な表現として機能しています。
諸手の例文
- 1 新しいプロジェクトのリーダーに彼が就任すると聞いて、チーム全員が諸手を挙げて賛成した。彼の実力なら絶対に成功させてくれると信じているから。
- 2 久しぶりに実家に帰ると、母が諸手を広げて迎えてくれた。どんなに大人になっても親には子どもでしかないんだなと感じる瞬間。
- 3 会社の飲み会で部下がカラオケで熱唱しているのを見て、思わず諸手で拍手してしまった。普段はおとなしいあの子の意外な一面に感動!
- 4 子どもが初めて描いた家族の絵を見せてくれたとき、諸手で受け取らずにはいられなかった。その一生懸命な様子に胸が熱くなった。
- 5 友達が苦労して完成させた手作りのケーキを、私たちは諸手を挙げて絶賛した。見た目以上に心のこもった味がした。
「諸手」と「両手」の使い分けポイント
「諸手」と「両手」はどちらも「左右の手」を意味しますが、使用場面によって微妙なニュアンスの違いがあります。日常会話では「両手」が自然ですが、慣用句や格式ばった表現では「諸手」が好まれる傾向があります。
- 「諸手を挙げて賛成する」→ 慣用句として定着しているため「両手」では置き換え不可
- 「両手で抱える」→ 日常的な動作表現では「諸手」より「両手」が自然
- 格式ばった文章やスピーチでは「諸手」を使うと知的で洗練された印象に
- ビジネス文書では「諸手を挙げて歡迎します」など、改まった表現に適している
言葉の選択は、場の空気と伝えたいニュアンスによって変わるものだ。諸手という言葉には、両手にはない格式と深みがある。
— 金田一春彦
「諸手」にまつわる歴史的背景
「諸手」という表現は、平安時代の文献から確認できる古い言葉です。当初は単に両手を指すだけでなく、複数人による共同作業や協力を意味する場合もありました。武家社会が発展する中で、戦術用語としても重要な役割を果たすようになりました。
- 平安時代:貴族文化の中で儀礼的な動作として「諸手」が使用される
- 鎌倉時代:武家社会で「諸手打ち」「諸手搦み」などの武術用語として発展
- 江戸時代:町人文化の中で慣用句として広く普及
- 近代:文学作品中で比喩表現として多用されるようになる
特に興味深いのは、能楽や歌舞伎などの伝統芸能において、「諸手」を使った様式化された動作が多く見られる点です。これらの芸能を通じて、言葉と動作が結びついた表現が一般にも広まりました。
現代における「諸手」の使用注意点
現代で「諸手」を使う際には、いくつかの注意点があります。若い世代にはあまり馴染みのない言葉であるため、誤解を生まないような配慮が必要です。また、ビジネスシーンと日常会話での使い分けも重要です。
- 若い相手には「両手」を使った方が伝わりやすい場合がある
- 「諸手を挙げて」は強い賛意を示す表現なので、軽い同意には不適切
- 書き言葉では問題ないが、話し言葉では状況に応じて使い分ける
- 国際的な場面では、文化によって手の動作の意味が異なるため注意が必要
特に、ジェスチャーを伴う場合、「諸手を挙げる」動作が海外では投降や降参の意思表示と誤解される可能性があるため、国際的な場面では説明を添えるなどの配慮が望ましいでしょう。
よくある質問(FAQ)
「諸手」と「両手」の違いは何ですか?
基本的な意味は同じ「左右の手」ですが、「諸手」はやや文語的で慣用句的な表現、「両手」は日常的で一般的な表現というニュアンスの違いがあります。「諸手を挙げて」などの決まった言い回しでは「諸手」が使われる傾向があります。
「諸手」は「もろて」と「もろで」どちらで読むのが正しいですか?
標準的には「もろて」と読みますが、「もろで」と濁って読まれる場合もあります。地域や文脈によって読み方が変わることもあり、どちらも間違いではありません。島根県の美保神社では「もろた」と読む特殊な例もあります。
「諸手を挙げて賛成する」とは具体的にどんな動作ですか?
文字通り両手を高く挙げて賛意を示す動作を指します。心から全面的に賛成する気持ちを強調する表現で、会議や討論などで強い同意を示すときに使われます。実際に手を挙げるかどうかは別として、比喩的に使われることも多いです。
「諸手」を使った慣用句にはどんなものがありますか?
「諸手を挙げて」が最も一般的な慣用句です。この他に、相撲や剣道の「諸手突き」、日本古来の泳法「諸手伸し」など、特定の分野で使われる専門用語としても用いられます。
ビジネスシーンで「諸手を挙げて」を使うのは適切ですか?
フォーマルな場面でも問題なく使えます。特に「諸手を挙げて賛成します」「諸手を挙げて歡迎します」など、強い賛意や歓迎の気持ちを表現するときに適した表現です。ただし、やや堅い印象を与える場合があるので、状況に応じて使い分けると良いでしょう。