高じるとは?高じるの意味
程度が非常に大きくなること、または病状が悪化すること
高じるの説明
「高じる」は、もともと文語の「高ずる」が変化した言葉で、主に二つの意味を持ちます。一つは「程度がはなはだしくなる」という意味で、趣味や感情が通常の範囲を超えて大きく発展する様子を表します。例えば、単なる趣味だったことが本格的な活動に発展したり、ちょっとした感情が強い行動に結びついたりする場合に使われます。もう一つの意味は「病状が悪化する」で、持病や症状がさらに重くなる状況を指します。また、「高じる」は常用漢字ではない「嵩じる」「昂じる」と表記されることもありますが、公的な文章では「高じる」が標準的に使われています。
何気ないことが思わぬ方向に発展する様子を端的に表せる、日本語の豊かさを感じさせる言葉ですね。
高じるの由来・語源
「高じる」の語源は、文語動詞「高ずる」に遡ります。「高ずる」は「高くなる」「程度が増す」という意味を持つ古語で、これが口語化する過程で「高じる」という形に変化しました。漢字の「高」は文字通り「高い」「優れている」という意味を持ち、物事の程度や状態が通常の水準を超えて上昇する様子を表現しています。また、「嵩じる」「昂じる」という異表記も存在しますが、「嵩」は「かさ」つまり量や規模が増大すること、「昂」は気持ちや感情が高揚することをそれぞれ強調しており、文脈によって微妙なニュアンスの違いが生まれます。
一つの言葉で多様な状態の変化を表現できる、日本語の奥深さを感じさせる表現ですね。
高じるの豆知識
「高じる」と似た表現に「エスカレートする」がありますが、実はこの「エスカレート」という言葉自体、エスカレーターのメーカーであるオーティス社の商標から生まれた造語です。階段状に上がっていく様子から、物事が段階的に激化する意味で使われるようになりました。また、「高じる」は病気が悪化する意味でも使われますが、これは病状の「程度が高まる」という発想から来ています。面白いのは、ポジティブな趣味とネガティブな病気の両方に同じ表現が使える点で、日本語の豊かな表現力の一端を感じさせます。
高じるのエピソード・逸話
有名な作家の夏目漱石は、その創作活動が「高じて」数々の名作を生み出しました。もともと英語教師だった漱石は、教え子たちに文学の面白さを伝えるうちに自身の創作意欲が高じ、『吾輩は猫である』を執筆。これが評判となり、教師を辞めて職業作家へ転身しました。また、現代ではイチロー選手が、少年時代からの野球への情熱が高じてメジャーリーグで活躍。子どもの頃から毎日欠かさずバッティング練習を続けるという並々ならぬ努力が、世界の頂点に立つまでの原動力となったのです。
高じるの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「高じる」は状態変化を表す自動詞として分類されます。特に「程度の変化」を表現する点が特徴的で、時間の経過とともに状態が推移していく過程に焦点が当てられます。構文的には「〜が高じて」という形で原因やきっかけを表す節を伴うことが多く、前後の文脈との結びつきが強い表現です。また、漢字表記のバリエーション(高じる・嵩じる・昂じる)は、同じ音読みでも異なる漢字を使い分けることで、微妙な意味の違いを表現しようとする日本語の特徴をよく表しています。これは漢字の表意文字としての性質を活かした、日本語ならではの表現方法と言えるでしょう。
高じるの例文
- 1 ダイエットのための軽いジョギングが高じて、フルマラソンに出場するまでになってしまった。
- 2 SNSで料理写真を投稿するのが楽しくなり、それが高じて料理ブログを始めることになった。
- 3 友達とカラオケに行くのが好きだったのが高じて、今ではボイストレーニングに通っている。
- 4 節約のため自炊を始めたら、それが高じて週末は食材探しにスーパー巡りをするようになった。
- 5 子どもの写真を撮るのが趣味だったのが高じて、プロ並みのカメラ機材を揃えてしまった。
「高じる」の類語との使い分け
「高じる」にはいくつかの類語がありますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。適切に使い分けることで、より正確な表現が可能になります。
| 言葉 | 意味 | 使用例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 高じる | 程度が甚だしくなる、病状が悪化する | 趣味が高じて事業化した | 中立的な表現 |
| エスカレートする | 段階的に激化する | 議論がエスカレートした | 対立や競争に使われる |
| 深刻化する | 問題がより重大になる | 環境問題が深刻化する | ネガティブな事象に限定 |
| 悪化する | 状態がより悪くなる | 病状が悪化する | 医療現場でよく使われる |
| 発展する | より良い方向に進む | 交流が発展する | ポジティブな変化に使う |
特に「高じる」は、良い方向にも悪い方向にも使える点が特徴です。文脈によってポジティブにもネガティブにも解釈できるため、前後の表現で意図を明確にすることが重要です。
実際の使用例と注意点
「高じる」を使う際には、いくつかの注意点があります。特にビジネスシーンや医療現場では、適切な表現を選ぶことが求められます。
- 病気に関する話題では「悪化する」「重症化する」などの明確な表現を使う
- ビジネスでは「発展する」「進展する」などポジティブな言い換えを検討する
- 公式文書では「高じる」よりも「増大する」「拡大する」など客観的な表現を優先する
- 会話では「どんどんハマってしまって」など、より日常的な表現も併用する
言葉は生き物である。時代とともに変化し、文脈によって色合いを変える。『高じる』という一語にも、日本語の豊かさと繊細さが凝縮されている。
— 金田一春彦
歴史的な変遷と現代での使用実態
「高じる」は時代とともにその使われ方が変化してきました。元々は文語表現でしたが、口語としても定着し、現代では様々な場面で使われるようになりました。
- 明治時代以前:主に文語として使用され、「高ずる」の形が一般的
- 大正〜昭和初期:口語としての使用が増加し、「高じる」の形が定着
- 現代:ビジネス、医療、日常会話など多様な場面で使用
- インターネット時代:SNSなどで若年層にも認知度が向上
最近では、趣味や興味が発展するポジティブな文脈で使われることが増えています。特に「〇〇が高じて」という表現は、人生の転機や新たな挑戦を語る際によく用いられ、前向きな変化を表現する言葉として親しまれています。
よくある質問(FAQ)
「高じる」と「エスカレートする」の違いは何ですか?
「高じる」は程度が甚だしくなる全般的な状態変化を表すのに対し、「エスカレートする」は段階的に激化していく過程に焦点があります。また、「高じる」は病気の悪化などネガティブな意味でも使えますが、「エスカレートする」は主に対立や競争が激化する場合に用いられる傾向があります。
「高じる」をビジネスシーンで使うのは適切ですか?
フォーマルな場面では「深刻化する」「悪化する」「発展する」など、より明確な表現を使うのが無難です。ただし、趣味が仕事に発展したようなポジティブな文脈では、「趣味が高じて」という表現も自然に使うことができます。
「高じる」の否定形や過去形はどう表現しますか?
否定形は「高じない」、過去形は「高じた」となります。例えば「症状が高じなかった」「興味が高じて専門家になった」などと使います。ただし、病気の悪化を意味する場合は「悪化しなかった」「重症化しなかった」と言い換える方が明確です。
「嵩じる」「昂じる」との使い分けはどうすればいいですか?
公用文や一般的な文章では「高じる」を使うのが標準的です。「嵩じる」は規模や量の増大、「昂じる」は感情や気分の高揚を特に強調したい場合に使われますが、常用漢字ではないため、小説や詩などの文学作品以外では「高じる」で統一するのが安全です。
「高じる」を使うときの注意点はありますか?
病気や症状について使う場合、相手の状態を軽んじる印象を与える可能性があるので注意が必要です。医療現場では「悪化する」「重症化する」などの専門用語を使う方が適切です。また、ビジネスでは「発展する」「進展する」などポジティブな表現に言い換える配慮も大切です。