「首をひねる」とは
納得できない、理解に苦しむときに「えっ!?」と頭部を傾ける動作をしてしまうことはありませんか?あるいは、考え込む際に、腕組みしながら首を横に曲げている人を見たことはありませんか?
「首をひねる」は、このように、「首を横に曲げて考えこんでいる様子」から、「理解できずに考えこむ。疑問、不満、不賛成の意向を示す」を意味する慣用表現です。「首を捻る」とも表記します。
「首」とは
「首」は、脊椎動物の頭部と胸部を繋いでいる部分、あるいは、頭部全体を指す言葉です。「首をひねる」の「首」は、後者の意味ですね。
また、「首」には、瓶の首など「頭部と胸部のつなぎの部分に似た形」、「衣服の襟の部分」、あるいは、「解雇」などといった意味もあります。
「ひねる」とは
「ひねる」はたくさんの意味を持つ言葉です。大きく分けると次のようになります。
- 動作に関すること(つまんで回す。体の一部をねじる。つねる。絞め殺す。)
- 思考に関すること(考えを巡らす。変わった趣向や考察をする。)
- 1と2以外(苦労して歌や句を生み出す。簡単に負かす。金銭を紙に包む。)
1は「足首をひねる」「眠気覚ましに頬をひねる」のように用いられます。「首をひねる」の「ひねる」はこの1の意味です。
また、2は「景気対策に頭をひねる」のように思案するという意味や、「今回の試験はひねった問題が多い」のように趣向を変えるという意味で使いますね。
3の意味においては、「ようやく一句ひねりだした」「ひとひねりでやられてしまった」「おひねりを貰う」のように用いられます。
「首をひねる」の使い方
「理解できずに考えこむ」という意
- 今回の試験問題が難しすぎて、みなしきりに首をひねっていた。
- 今月になって首をひねるような不思議な事件が多発している。
「疑問・不満・不賛成など」の表明
- 身に覚えのない叱責を受けて、彼女は憤慨するよりも首をひねってしまった。
- チームの成績が思わしくなく、監督は首をひねらざるを得なかった。
- 主治医が行った父の治療について、セカンドオピニオンの医師は首をひねった。
「首をひねる」の類語
「頭をひねる」
「頭をひねる」は「いろいろと思いをめぐらす。疑問に思う。」を意味する慣用句で、「頭を捻る」とも表記します。動作も意味も「首をひねる」と似ていますが、こちらは「熱心に考える」というニュアンスを表す場合に用いるケースが多いかもしれません。
[例文]
- 彼は長男から手伝ってと言われた夏休みの自由研究に頭をひねっていた。
- どういうわけか取引先からキャンセルが相次ぎ、頭をひねった。
「首をかしげる」
「首をかしげる」とは「疑問や不審に思ったりすること」という意味で、「首を傾げる」とも表記します。動作としては「首をひねる」と同じで、意味も似ていますが、こちらには「考えこむ」というニュアンスは含まれないようです。
[例文]
- 刑事は首をかしげながら事件現場から立ち去った。
- 最近の大統領の政策には首をかしげることばかりです。
「思案する」
「思案する」とは、「あれこれと考えめぐらすこと。心配すること。」という意味です。「考えをめぐらせる様子」を表す点では「首をひねる」と似ていますが、こちらは疑問や不満などの気持ちは必ずしも含まれません。
[例文]
- 彼は、彼女が思案するあいだ辛抱強く待った。
- やれるだけのことはやったのだから、今さら思案しても仕方がない。
「首」を使った慣用句
「首を切る」
「首」自体にも「解雇」の意味がありますが、「免職する。解雇する。」ことを「首を切る」とも言いますね。また、「首を切る」は、物理的に頭部を切る、つまり、「打ち首にする」という物騒な意味ももっています。
[例文]
- 会社の業績悪化により、幾人かの社員の首を切らざるを得なくなった。
- 首を切られて職を求める人たちがハローワークに列をつくった。
「首が回らない」
「首が回らない」とは、「借金や負債など支払わなくてはいけないお金が多くてやりきれない」という意味です。
[例文]
- 自分の店が倒産したせいで、彼は首が回らないらしいよ。
- 本業だけでは首が回らないので副業を探している。
「首を突っ込む」
「首を突っ込む」は、「関心や興味をもってその事に関係をする」、あるいは、「物事に興味をもって深入りをしたり、没頭するさま」を表しています。
[例文]
- 彼女は社内の恋愛話にはいつも首を突っ込んでくる。
- 男が下手に女性同士の喧嘩に首を突っ込むものではないよ。
「首を縦に振る・首を横に振る」
日本語においては、「はい」というときは首を縦に、「いいえ」というときは首を横に振りますね。その様子から、「首を縦に振る」は「賛成する。承知する。」、逆に、「首を横に振る」は「賛成しない。承知しない。」を意味します。
[例文]
- 監督は選手の熱意におされて首を縦に振った。
- 相手の提示額があまりに低く、今回の交渉では首を横に振らざるを得なかった。