「後妻業」とは?
「後妻(ごさい)」という言葉があります。最近は使われることが減りましたが、「男性の再婚相手」を指す言葉です。男性の前の妻(「前妻(せんさい)」、と言います)との別れが生別か死別かは問いません。
「後妻業」とは、生業(なりわい)として後妻におさまること、あるいはその女性を指す言葉です。金品目的で行われる、いわゆる結婚詐欺の一種ですね。
「後妻業」による犯行は過去にも多く発生しており、そのほとんどが結婚相談所での出会いから始まっていることから、業界内では常に警戒されてきました。
そうした手口、そして「後妻業」という言葉が世間にも広く知られるようになったのは、直木賞作家・黒川博行さんの小説『後妻業』が映画化された2016年頃のことです。
「後妻業」を使った例文
- 二人目の旦那さんが亡くなったばかりなのに、また次の人。まさか彼女は後妻業なのでは。
- バツイチの彼から結婚を申し込まれたが、私とは年が離れすぎているので、周りの人から後妻業だと思われはしないだろうか。
「後妻業」の手口
ひとりで生活する男性の寂しさに付け込み金品を奪い取る卑劣な犯行、それが「後妻業」です。
その手口の特徴として、高齢の男性ばかりを狙うことが挙げられます。高齢者は、病気や事故で突然亡くなるケースも多いため、もしその死が仕組まれたものだったとしても自分に疑いの目が向けられる可能性が低くなるからです。
もうひとつ、被害男性に公正証書遺言を作らせておくことも「後妻業」の特徴です。彼女たちが公正証書遺言にこだわる理由としては、以下のような公正証書遺言の特性があげられます。
- 公証人や証人が作成に関与するため、家庭裁判所による遺言の検認作業に時間を取られることなく、すぐに遺言が効果を発揮する。
- 内容どおりに実行されるため、自分に有利な内容で残してもらうことで確実に遺産を自分のものにできる。
公正証書遺言に書かれた内容は、実子であっても覆すことはできません。後妻業の女性がその有効性を利用し、10人もの男性から合計10億円相当の金品を奪いとった事件も実際に起きています。
小説『後妻業』の映像化
黒川博行さんの小説『後妻業』は、2016年に『後妻業の女』のタイトルで映画化されました。資産家の後妻におさまり金品を貢がせる主人公・小夜子を大竹しのぶさん、小夜子と共謀し犯行におよぶ結婚相談所の経営者・柏木を豊川悦司さんが演じています。
その2年後には関西テレビにより『後妻業』のタイトルでドラマ化され、フジテレビ系で9話にわたって放送されました。ドラマ版の小夜子を演じたのは木村佳乃さん、柏木を演じたのは高橋克典さんです。
ドラマ『後妻業』のあらすじ
結婚相談所「ブライダル微祥」の経営者・柏木亨(高橋克典)が裏で営む「後妻業」。柏木は「ブライダル微祥」の登録会員の中から資産家老人を選び、「後妻業」メンバーの女性と結婚させては金品を奪い取るという行為を繰り返していた。
柏木のバディで「後妻業」のエース・小夜子(木村佳乃)。小夜子の生まれ持った美貌と巧みな話術をもってすれば、男たちを虜にするなどお手の物。中瀬耕造(泉谷しげる)もそんな小夜子に心奪われ、彼女を後妻に迎えたひとりだった。
ほどなく耕造と小夜子は結婚。耕造には前妻との間に二人の娘がいるが、今ではほとんど付き合いもなく、小夜子の存在を知らせることもなかった。
耕造の死後、突然娘たちの前に現れた小夜子は、公正証書遺言を手に「遺産は全てうち(私)のものだ」と言い放つ。しかし耕造の不自然な死に疑問を抱いた次女・中瀬朋美(木村多江)は、知人の探偵・本多芳則(伊原剛志)に捜査を依頼する。
耕造の死後も別の老人を標的に、同様の行いを繰り返す小夜子と柏木。事の真相を暴くためにバディとなった朋美と本多が、二人をどこまでも追い詰める。