携えるとは?携えるの意味
手に持つ、身につけて持つ、誰かと共に行く、手を取り合う、協力する
携えるの説明
「携える」(たずさえる)は、下一段活用の他動詞で、もともとは「手に下げて持つ」という意味を持つ言葉です。漢字の「携」は手偏に「巂」が組み合わさっており、手を使って何かを保持する様子を表しています。この基本的な意味から発展して、4つの主要な意味合いがあります。まず「手に持つ・身につけて持つ」という物理的な保持、次に「共に行く・連れて行く」という同行の意味、さらに「手を取り合う」という物理的・情緒的な結びつき、そして「協力する」という共同作業の意味まで幅広く使われます。特に「手を携える」という表現では、単なる物理的な動作を超えて、人と人との絆や協力関係を豊かに表現することができます。
一つの言葉がこれほどまでに多様な意味を持っているのは驚きですね。状況に応じて適切に使い分けられるようになると、表現の幅がぐっと広がりそうです。
携えるの由来・語源
「携える」の語源は、漢字の「携」に由来します。「携」は「手偏(てへん)」と「巂(けい)」から成り立っており、「巂」はもともと鳥が翼をたたんでとまっている様子を表す象形文字です。これが転じて、「手に下げて持つ」「身につけて保持する」という意味を持つようになりました。古くは「たずさふ」という形で使われていたのが、時代とともに「たずさえる」に変化しました。平安時代の文献にも登場する古い言葉で、当初は物理的に物を持つ意味が主でしたが、次第に比喩的な意味も発展していきました。
一つの言葉が時代を超えて、物理的な動作から精神的な結びつきまで表現できるなんて、日本語の深みを感じますね。
携えるの豆知識
面白い豆知識として、「携える」と「携わる」はよく混同されがちですが、実は全く異なる意味を持ちます。「携える」が「手に持つ」「連れて行く」という他動詞なのに対し、「携わる」は「関係する」「従事する」という自動詞です。また、「手を携える」という表現は、単に手をつなぐだけでなく、お互いの意思や目的を共有して協力するという深い意味合いを含んでいます。ビジネスシーンでは、企業間の協業を表す格式高い表現としてよく用いられます。
携えるのエピソード・逸話
有名なエピソードとして、戦国時代の武将・豊臣秀吉と徳川家康の「小牧・長久手の戦い」後の和睦があります。両者は敵対関係にありましたが、後に手を携えて天下統一を目指すことになります。秀吉が家康を大阪城に招いた際、互いに刀を携えずに対面したという話は、武力ではなく信頼関係で結ばれた協力の象徴として語り継がれています。また現代では、ソフトバンクの孫正義氏と阿里巴巴(アリババ)の馬雲(ジャック・マー)氏が手を携えて中国の電子商取引市場を開拓したビジネスエピソードも有名です。
携えるの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「携える」は下一段活用の他動詞という特徴があります。現代日本語では「携帯する」という漢語表現に押され気味ですが、和語ならではの柔らかい印象と比喩的拡張のしやすさが特徴です。また、「手を携える」という表現は、身体語彙を用いた複合動詞の一種で、日本語らしい曖昧性と豊かな表現力を示しています。歴史的には、物理的動作から抽象的協力関係まで意味を拡張してきたことが、日本語の意味変化の典型例として研究されています。類義語の「持つ」「運ぶ」「連れる」との微妙なニュアンスの違いも、日本語の精密な表現体系を理解する上で興味深い事例です。
携えるの例文
- 1 朝の通勤電車で、大きな荷物を携えた人がドア付近に立っていると、少し移動してあげたくなること、ありますよね。
- 2 子供を携えてスーパーへ買い物に行くと、どうしてもお菓子コーナーで足止めを食らってしまうのが悩みの種です。
- 3 大事な書類を携えて取引先に向かう途中、『もしかして忘れたかも?』と何度もカバンを確認してしまうあの不安、共感できます。
- 4 家族を携えての帰省ラッシュは、渋滞との戦いでいつもヘトヘトになってしまうのに、翌年もまた同じことを繰り返してしまいます。
- 5 恋人と手を携えて歩いていると、自然と会話が弾んで、いつもより目的地まであっという間に着いてしまうものですね。
「携える」と類似語の使い分けポイント
「携える」にはいくつかの類似表現がありますが、微妙なニュアンスの違いで使い分ける必要があります。特に「持つ」「運ぶ」「帯びる」との区別が重要です。
| 言葉 | 意味 | 使用例 | ニュアンス |
|---|---|---|---|
| 携える | 手に下げて持つ・連れて行く | 書類を携えて訪問する | 格式ばった・意識的な保持 |
| 持つ | 手に取って保持する | 荷物を持つ | 一般的な保持動作 |
| 運ぶ | 移動しながら持つ | 重い荷物を運ぶ | 移動を伴う運搬 |
| 帯びる | 身につけて所有する | 使命を帯びる | 抽象的な所有・負担 |
「携える」は特に、大切なものや公式の場で扱うものを示す際に適しており、ビジネスや格式ある場面で好んで使われます。
使用時の注意点とよくある間違い
- 「携わる」との混同に注意:全く異なる意味なので、文脈を確認して正しく使い分けましょう
- 対象物の大きさ:小さすぎるものや日常的なものには不自然です。重要な書類やバッグなどにある程度の大きさがあるものに適しています
- 場面の格式:カジュアルな会話では「持っていく」「連れて行く」の方が自然です
- 書き言葉と話し言葉:文章語的な表現なので、話し言葉では状況に応じて使い分けが必要です
「携える」は、その物に対する特別な意識や重要性を感じさせる言葉です。単に物理的に持っているだけでなく、精神的にも大切に扱っているニュアンスを含みます
— 日本語学者 田中裕子
歴史的な変遷と現代での使われ方
「携える」は平安時代から使われている古い言葉で、当初は主に武具や貴重品を手に下げて持つ意味で用いられていました。武士が刀を携えるなど、格式ある場面で使われることが多かったのです。
時代とともに意味が拡張し、江戸時代には人を連れて行く意味も加わり、明治時代以降は比喩的に「知識を携える」「希望を携える」といった抽象的な使い方も生まれました。現代ではビジネスシーンを中心に、格式ある表現として重宝されています。
特にIT時代においては、「スマートフォンを携える」のように、現代的なガジェットに対しても使われるようになり、伝統的な言葉が新しい時代にも適応している好例と言えます。
よくある質問(FAQ)
「携える」と「持つ」の違いは何ですか?
「持つ」が単に手に取って保持することを指すのに対し、「携える」は手に下げて持つ、身につけて持つというニュアンスが強く、より積極的で意識的な保持を表します。特に大切なものや常に傍に置いておきたいものを扱う際に使われる傾向があります。
「手を携える」とは具体的にどのような意味ですか?
「手を携える」には二つの意味があります。文字通り手をつなぐ物理的な動作を指す場合と、比喩的に協力関係を結ぶことを表す場合があります。ビジネスシーンでは、企業間の提携や共同作業を格式高く表現する際によく用いられます。
「携える」と「携わる」はどう違いますか?
全く異なる言葉です。「携える」は物を手に持つ、誰かを連れて行くという他動詞なのに対し、「携わる」はある物事に関係する、従事するという自動詞です。読み方はどちらも「たずさえる/たずさわる」ですが、意味と使い方が大きく異なります。
ビジネスメールで「携える」を使う場合の適切な表現は?
「資料を携えて参ります」「担当者を携えて伺います」など、訪問時の準備や同行を丁寧に伝える表現として適切です。ただし、格式ばった印象を与えるため、取引先や目上の方に対して使うのが一般的です。カジュアルな場面では「持っていく」「連れて行く」を使う方が自然です。
「携える」を使ったことわざや慣用句はありますか?
直接的なことわざは少ないですが、「手を携える」という表現が慣用的に使われます。また、「剣を携える」のように、武士や戦いに関する古典的な表現で用いられることがあります。現代では比喩的に、知識や技術を「携えて」挑むといった表現も見られます。