「濡れ場」の意味
「濡れ場」とは演劇用語です。舞台やテレビ、映画の中で性行為のシーンを演じることを「濡れ場」といいます。
演劇業界の、いわゆる隠語の一つともいえます。芝居の中で性描写のシーンについて口にする時に、性描写における露骨な表現を避けて会話に織り込むことができます。
とはいえ、近年では「濡れ場=露骨な性描写」というイメージが一般にも浸透し、インターネットで「濡れ場」と検索すると、アダルトコンテンツに対する制限がかかることもあります。「濡れ場」そのものが「アダルトな言葉」として認識されつつあります。
「濡れ場」の例文
- 今度の月9は濡れ場のシーンがあるらしい。
- 明日は濡れ場の撮影だ。
- あの女優さんが濡れ場に体当たりの演技で挑戦するようだ。
- 小説を書いているのだが、濡れ場のシーンに苦戦している。
- 家族でテレビ見ている時に濡れ場が出てくると気まずい。
- 濡れ場があるようなドラマはゴールデンタイムに放送するべきではないと思う。
- この映画は濡れ場が露骨すぎて上映中止になった。
「濡れ場」の使い方
「濡れ場」は演劇以外でも使用される
上で説明したように「濡れ場」は本来は演劇用語です。しかし、最近ではドラマや映画だけでなく、マンガや小説、ゲームなどに登場する性行為のシーンを「濡れ場」と言うことがあります。
たとえば、新潮社は「新潮文庫メールアーカイブス」の中で「夜中にこっそり読みたい濃厚な濡れ場のある小説」というテーマで、自社の小説を紹介しています。性描写をメインとした官能小説以外にも、恋愛小説や時代小説などの中から作品をピックアップしています。
今はまだ演劇やテレビや映画などの映像作品に対して使われることが多い「濡れ場」という言葉ですが、この例ように、今後はマンガや小説に対しても「濡れ場」という言葉が使われる機会が増えるかもしれません。
「濡れ場」はアダルト作品では使われない
ただし、性描写のシーンのすべてが「濡れ場」と呼ばれるわけではありません。性描写が露骨な映像作品というとアダルトビデオが代表的ですが、アダルトビデオに対して「濡れ場」という言葉を用いることはあまりありません。
「濡れ場」はそもそも、露骨な表現を避けるために使いますから、アダルトビデオにおいてそのような遠回しな表現は必要ないと言えます。また、このことから、「濡れ場」は「性描写がメインではない作品」における「性描写のシーン」を指す言葉である、とも言えます。
「濡れ場」の語源
「濡れ場」は元々は歌舞伎の世界の言葉です。「濡事(ぬれごと)」とも表現されます。歌舞伎では初期からこの濡れ場があったと言われています。特に、関西の歌舞伎では遊女を買うシーンが見せ場の一つとされることが多く、この濡れ場が重要なシーンに位置付けていました。
とはいえ、舞台の上で直接的な表現をすることは避け、様式的な演技で表現します。有名なのが「女が男の髪を梳く」というシーン。これは歌舞伎における性行為の暗喩です。また、濡れ場を得意とする役者のことは「濡事師」と呼んでいました。
時代がたつにつれ、一度は、舞台上でも露骨な描写が増えていったそうです。しかし、明治時代になって、歌舞伎が伝統文化として扱われるようになってからは、露骨な濡れ場の表現は控えるようになりました。
「濡れ場」の別の表現
「濡れ場」の別の表現には、「ラブシーン」や「ベッドシーン」などがあります。ただ、「ラブシーン」は必ずしも性行為のシーンとは限らず、キスシーンなども含まれるので、「濡れ場」の厳密な言い換えは「ベッドシーン」といえるでしょう。
「濡れ場」のまとめ
「濡れ場」は性描写のシーンの遠回しな言い方ではありますが、今ではこの「濡れ場」という言葉自体にも卑猥なイメージがあります。
ですが歌舞伎では古くから濡れ場のシーンが重要な見せ場として受け継がれてきました。卑猥な言葉の中には意外な歴史が隠れているのです。