挙措とは？挙措の意味
立ち振る舞い、身のこなし、動作の様子を指す言葉。また、官職の任命と免職という意味も持つが、現代では主に前者の意味で使用される。
挙措の説明
「挙措」は「きょそ」と読み、日常的な動作や態度全体を指す格式のある表現です。この言葉の面白いところは、漢字一つひとつに意味が込められている点。「挙」は「上げる」、「措」は「置く・下げる」という意味を持ち、上下の動作を組み合わせることで「自然な動き」という概念を表現しています。現代では「挙措端正」や「挙措進退」といった関連語で使われることが多く、特にビジネスシーンや改まった場面で用いられる傾向があります。日常会話では「立ち振る舞い」と言い換えることが多いですが、知的な印象を与えたい時には「挙措」を使うと効果的です。
知っていると一目置かれる、教養を感じさせる美しい日本語ですね。
挙措の由来・語源
「挙措」の語源は古代中国に遡ります。「挙」は「手を上げる動作」、「措」は「手を下ろす・置く動作」を表し、両方の動作を組み合わせて「自然な身のこなし」という意味が生まれました。元々は官吏の任命と解任を指す官僚用語でしたが、次第に日常的な立ち振る舞い全般を指すようになりました。日本には漢字とともに伝来し、格式のある表現として定着しました。
美しい日本語を知ることで、自分自身の振る舞いも自然と洗練されていくものですね。
挙措の豆知識
「挙措」は現代ではあまり使われませんが、実は「挙措不審」という警察用語が存在します。不審な行動や怪しい動きを指す言葉で、警察官の間では現在も使われている専門用語です。また、能楽や茶道などの伝統芸能では、今でも「挙措」を重視した指導が行われており、美しい動作を「挙措端正」と表現します。
挙措のエピソード・逸話
元首相の吉田茂は、その挙措の端正さで知られていました。戦後の混乱期においても、常に背筋を伸ばし、ゆったりとした動作で話す姿は「貴族的」と評されました。ある外交の場では、相手国の代表が慌てた様子を見せた際、吉田は「挙措を乱してはならぬ」と周囲に諭し、自身は終始冷静な態度を貫いたという逸話が残っています。また、女優の原節子もその優雅な挙措で有名で、スタジオで待機している時でも背筋をピンと伸ばし、無駄のない動きで関係者を感心させていたそうです。
挙措の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「挙措」は興味深い特徴を持っています。まず、二つの動詞（挙げる＋措く）が組み合わさって名詞化された複合語です。このような構造は漢語によく見られる特徴で、動作の対義語を組み合わせることで抽象的な概念を表現しています。また、「挙措」は現代日本語ではやや古風な印象を与える「レトロニム」（時代遅れになった言葉）の一種です。使用頻度は低いものの、格式ばった文書や改まった場面では依然として使われる、いわゆる「儀礼的語彙」に分類できます。
挙措の例文
- 1 面接の場では、どんなに緊張していても挙措を乱さないように気をつけるものですね。
- 2 初めてのデートで、相手の挙措がとても優雅で、つい自分まで背筋が伸びてしまいました。
- 3 大事なプレゼンの前日は、挙措まで堅くなってしまうほど緊張してしまいます。
- 4 上司の挙措を見ていると、経験の差を感じずにはいられません。
- 5 子どもの前では、なるべく挙措を正して見本を示そうと心がけています。
「挙措」と類語の使い分け
「挙措」にはいくつかの類語がありますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。適切に使い分けることで、より正確な表現が可能になります。
| 言葉 | 意味 | 使用場面 |
|---|---|---|
| 挙措 | 格式ばった立ち振る舞い全般 | 改まった場面・文章語 |
| 動作 | 体の動きそのもの | 日常会話・一般的な表現 |
| 身のこなし | 優雅で洗練された動き | 褒め言葉として使用 |
| 態度 | 心の持ち方が表れた様子 | 心理面を含む表現 |
| 振る舞い | 行動や態度の全般 | 広い意味での行動様式 |
特に「挙措」は、動作の美しさや品格までを含むため、単なる「動作」よりも深い意味合いを持ちます。ビジネスシーンや公式な場面で使うと効果的です。
歴史的背景と文化的意義
「挙措」という概念は、日本の伝統的な礼儀作法や美意識と深く結びついています。武士道や茶道、華道など、日本の様々な文化において、美しい挙措は重要な修練項目とされてきました。
礼は則ち挙措を正しくす
— 論語
古代中国の儒教思想の影響を受け、日本では朝廷儀礼や武家社会において、格式ある挙措が重視されました。江戸時代には、武士の子弟教育として「挙措作法」が教えられ、現代のビジネスマナーにも通じる基礎となっています。
- 宮中儀礼における優雅な挙措の伝統
- 武士の礼法としての発展
- 茶道・能楽などの芸道における重要概念
- 現代の接客業やビジネスマナーへの影響
実践的な使用上の注意点
「挙措」を使用する際には、以下の点に注意が必要です。適切な文脈で使うことで、より効果的な表現が可能になります。
- 日常会話では堅苦しく聞こえる可能性がある
- 褒め言葉として使う場合は「挙措が美しい」など具体的に表現する
- ビジネス文書や公式な場面で効果を発揮する
- 若い世代には理解されにくい場合があるため、状況に応じて説明を加える
- 否定形で使う場合は「挙措を乱す」など、慣用表現を意識する
特に、相手を褒める際には「あなたの挙措には品がある」など、具体的な誉め言葉と組み合わせることで、より自然で心のこもった表現になります。
よくある質問（FAQ）
「挙措」の正しい読み方は何ですか？
「挙措」は「きょそ」と読みます。「きょそ」は音読みで、どちらの漢字も常用漢字表に掲載されている読み方です。間違えやすい読み方として「あげそ」や「きょさく」などがありますが、正しくは「きょそ」です。
「挙措」は日常生活でどのように使えばいいですか？
改まった場面や格式のある文章で使用するのが適しています。例えば「彼の挙措は常に端正だ」や「大事な場面では挙措に気を配る」などのように使います。日常会話では「立ち振る舞い」や「動作」と言い換えると自然です。
「挙措」と「動作」の違いは何ですか？
「動作」が単に体の動きを指すのに対し、「挙措」は動作に加えてその人の品格や教養が表れた立ち振る舞い全体を指します。より格式ばった表現で、動作の美しさや品の良さを含意することが特徴です。
「挙措」を使った慣用句や四字熟語はありますか？
「挙措端正（きょそたんせい）」という四字熟語が代表的です。これは「立ち振る舞いがきちんとしていて美しい様子」を表します。また「挙措進退」もあり、こちらは「日常の動作や振る舞い」を意味します。
「挙措」をビジネスシーンで使う場合の注意点は？
取引先との重要な面談や公式な場面で使用すると効果的です。例えば「部長の挙措には学ぶところが多い」など、尊敬する上司の振る舞いを褒める場合に適しています。ただし、カジュアルな会話では堅苦しく聞こえる可能性があるので、状況に応じて使い分けましょう。