「万策尽きる」とは?
「万策尽きる」(ばんさくつきる)とは、直面している解決すべき問題や事柄において、できうる限りの手段や方策を講じても効果なく、解決への手立てがもうなにもなくなってしまった状態を指す言葉です。
「万策尽きる」の漢字の意味
「万策尽きる」をより深く理解するために、「万策」「尽きる」をそれぞれ検証していきます。
「万策」の「万」は、音読みが「まん・ばん」、訓読みが「よろず」です。意味は、お馴染みの数の単位「万」、そこから転じて「たくさんの数」、さらに「すべて」。「万策」の「万」は、この「すべて」の用法です。
「策」は音読みが「さく」、訓読みが「はかりごと・むち・つえ・ふだ」です。意味は、「万策」における「企て、計画、図り事」のほかに、訓読みの通りの、鞭、杖、札という意味があります。
「尽きる」の「尽」は、音読みが「じん」、訓読みが「つ・くす、つ・きる、つ・かす」。意味は、①出し切る、尽くす②尽きる、無くなる③ことごとく、すべて。「万策尽きる」では、①②の意味が用いられています。
したがって、「万策尽きる」とは、端的にいえば、「すべての計画・企てを出し切尽くした」という意味です。
「万策尽きる」の使い方
「万策尽きる」は、もうこれ以上打つ手がなくなった、というギブアップの状況で使う言い回しです。したがって、手立てを講じている最中に使うことはできません。
たとえば、「A氏は、万策尽きながらも次の手段を講じた」などとは言えません。ただし、予想というかたちであれば「A氏は、これで万策尽きてしまうかもしれない、と呟きながら、次の手段を講じた」という用い方は可能です。
さらに、厳密にいえば、真に「万策尽きた」かどうかは、神のみぞ知る、と言えることかもしれません。ドリカムの歌『何度でも』にもあるように、本当は「10001回目は何か変わるかもしれない」のですから。
「万策尽きる」は、つまりは、当事者が(もう、これ以上やれることはない)と思った時に使う言葉といえます。他人が、「いやいや、まだこの方法がある!」と思ったとしても、本人にとってギブアップであれば、「万策尽きた」といえるのです。
(A男)
自営の雑貨店が赤字続きで、なんとか再建しようと資金集めに奔走したのだが、万策尽きて倒産申告をしたよ。
(B子)
真知子は、夫の息子への虐待をなんとかやめさせようと努力を重ねたのだけど、万策尽きて離婚する決心をしたらしいわ。
(C男)
友人の山本君は、資金不足で起業は諦めるというんだ。まだ万策尽きたわけじゃないだろう、と叱咤激励してきたよ。
「万策尽きる」の類語
「万事休す」の意味と使い方
「万事休す」の「万事」は「すべてのこと」、「休す」は「終わり」を意味します。したがって、「万事休す」の意味は、できる限りのことはすべてやったが、効果はなく、これ以上何をやっても意味がない、という絶望的な状態を意味します。
「万事休す」は中国の故事成語です。昔の中国のある国に、王に溺愛され甘やかされつくした王子がいました。王子は、人から怒られても睨まれても、ただにこにこと笑うばかり。
国民は、そんな王子をみて、これでは国をおさめることは無理であろう、万事休す、と絶望したということです。
【文例】大切な商談が三時間後に札幌であるというのに、羽田空港で転倒して足を骨折し、救急車で運ばれ入院となった。万事休す、キャンセルするしかない。
「刀折れ矢尽きる」の意味と使い方
「刀折れ矢尽きる」は、字面からすぐに意味が伝わるはずです。戦場において、自軍の刀はすべて折れ、はなつべき矢もすべて使い果たしてしまった状態です。これ以上、敵軍に対抗できるすべがまったく無くなってしまったという、絶望的な言い回しです。
その絶望状態から転じて、対象となる問題などにおいて、講じる手段や方策がすべて尽きてしまい、もはやなすすべがない、という意味で用いられるようになりました。
「万策尽きる」も戦場での状況から生まれた言葉という説があります。しかし、「刀」も「矢」も失ったという具体的表現の「刀折れ矢尽きる」は、より、仕事や闘いなどの真剣勝負の場にふさわしいと言えましょう。