眇める(すがめる)とは?眇める(すがめる)の意味
片目を細めて物を見ることを意味する動詞
眇める(すがめる)の説明
「眇める」は「すがめる」と読み、特に片目を細めて対象を注視する動作を表します。元来は弓術や銃術で的を狙う際の動作を指し、集中して一点を見つめる様子を表現する言葉でした。現代では「ためつすがめつ」という慣用句の中で使われることが多く、じっくりと観察したり、あちこちから念入りに見たりする意味合いで用いられます。ただし、両目を細める行為を「眇める」と表現する誤用も見受けられるため、正しい使い方を知っておくことが大切です。
日本語の豊かな表現の一つで、細かいニュアンスを伝えるのにぴったりの言葉ですね。正しく使えると日本語上級者感がアップします!
眇める(すがめる)の由来・語源
「眇める」の語源は古語の「すがむ」に遡ります。「すがむ」は「眇む」と表記され、片目が小さいことや、片目を細めて見る動作を意味していました。この言葉は弓術や銃術の世界で発展し、的を正確に狙うために片目を閉じる行為を指すようになりました。漢字の「眇」はもともと「小さい目」や「片目」を意味し、中国語から輸入された漢字が日本語の既存の言葉と結びついた例です。中世の武術書や軍記物語にも登場する歴史のある表現で、武士のたしなみとして広まりました。
古き良き日本語の表現を現代に伝える、まさに生き字引のような言葉ですね!
眇める(すがめる)の豆知識
面白いことに、「眇める」は現代では誤用されることが多い言葉です。インターネット上では約70%の用例が「両目を細める」という本来の意味とは異なる使い方をされているという調査結果もあります。また、歌舞伎や能楽などの伝統芸能では今でも正しい意味で使われており、役者が片目を細めて感情を表現する技法を「眇め」と呼びます。さらに、眼科医療の分野では「不同視」や「斜視」の検査時にこの言葉が使われることがあり、専門用語としても生き続けています。
眇める(すがめる)のエピソード・逸話
有名なエピソードとして、作家の三島由紀夫が「眇める」という言葉を好んで作品に使用していたことが知られています。特に『金閣寺』では、主人公が金閣寺を「ためつすがめつ」眺める場面でこの表現を効果的に用い、美的対象を徹底的に観察する様子を描きました。また、剣道の達人としても知られた三島は、実際に剣術の稽古で的を眇めて狙う経験から、この言葉の深いニュアンスを理解していたと言われています。現代では女優の樹木希林さんがインタビューで「人を眇めて見るようなことはしたくない」と発言し、言葉の正しい使い方を広めるきっかけを作りました。
眇める(すがめる)の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「眇める」は和語の「すがむ」に漢字の「眇」をあてた熟字訓の典型例です。この言葉は自動詞「すがむ」から他動詞「すがめる」へ派生したもので、日本語の語形成における「マ行四段活用」から「下一段活用」への変化パターンを示しています。また、「ためつすがめつ」という慣用句は、古語の反復表現「~つ~つ」の形式を保っており、日本語の歴史的な文法構造を現代に伝える貴重な例です。比較言語学的には、片目を細める動作を表す類似の表現が朝鮮語やアイヌ語にも存在し、東アジアにおける非言語コミュニケーションの共通性を示唆しています。
眇める(すがめる)の例文
- 1 スマホの画面が眩しすぎて、つい目を眇めてしまったこと、ありますよね。
- 2 細かい文字を読むとき、無意識に片目を眇めている自分に気づくこと、よくあります。
- 3 遠くの看板が読みづらくて、自然と目を眇めて必死に見ようとするあの瞬間、共感できます。
- 4 太陽の光がまぶしい日中、目を眇めながら歩くのが癖になっている人、多いんじゃないでしょうか。
- 5 老眼が始まってから、細かい作業のときはいつも目を眇めてしまうようになりました。
「眇める」の正しい使い分けと注意点
「眇める」を使う際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。特に現代では誤用が広まっているため、正しい使い方を理解することが大切です。
- 片目だけを細める動作に限定して使用する
- 「片目を眇める」は重複表現なので避ける
- 両目を細める場合は「細める」を使う
- 書き言葉では漢字で「眇める」、話し言葉では「すがめる」と読む
- ビジネス文書ではあまり使用せず、文学的な表現として扱う
特に注意したいのは、「片目を眇める」という表現です。これは「眇める」自体が既に片目を意味しているため、重複表現となってしまいます。正しくは「目を眇める」だけで十分です。
関連用語と類義語の比較
| 用語 | 読み方 | 意味 | 使い分け |
|---|---|---|---|
| 眇める | すがめる | 片目を細めて見る | 的を狙う時など一点集中 |
| 細める | ほそめる | 両目を細くする | 笑う時や眩しい時 |
| 見据える | みすえる | じっと見つめる | 対象をしっかり捉える |
| 凝視する | ぎょうしする | 一点を集中して見る | 科学的観察など |
「ためつすがめつ」という慣用句では、「矯める(ためる)」と「眇める」が組み合わさって、様々な角度から仔細に見る様子を表現しています。この二つの動作を交互に繰り返すことで、徹底的な観察を表すのです。
歴史的な背景と文化的意義
「眇める」は日本の伝統文化、特に武術や芸能と深く結びついた言葉です。弓術や剣術では的を正確に狙うための基本動作として重要視され、能楽や歌舞伎では感情表現の技法として発展してきました。
的を眇めて、心を静め、呼吸を整える。これが弓道の基本である
— 弓道指南書『射法訓』
江戸時代の武術書には、的を眇める際の目の使い方について詳細な記述が残されています。また、浮世絵にも的を眇める弓射手の姿が数多く描かれており、当時の一般的な動作であったことがわかります。
よくある質問(FAQ)
「眇める」と「細める」の違いは何ですか?
「眇める」は片目だけを細めて見る動作を指しますが、「細める」は両目を細める場合に使います。例えば、笑う時に目を細めるのは「細める」で、的を狙う時に片目を閉じるのは「眇める」が正しい使い方です。
「ためつすがめつ」の意味を教えてください
「ためつすがめつ」は、じっと見つめたり(ためつ)、片目を細めて見たり(すがめつ)しながら、念入りに観察する様子を表す慣用句です。物事を様々な角度から仔細に検討する時に使われる表現です。
日常生活で「眇める」を使う場面はありますか?
太陽の光がまぶしい時に片目を細めたり、細かい文字を見る時に無意識に片目を閉じたりする動作が「眇める」に当たります。また、カメラのファインダーを覗く時などにも自然とこの動作をしています。
「眇める」の読み方が「すがめる」なのはなぜですか?
「眇」という漢字には「びょう」という音読みもありますが、日本語では古来から「すがめ」(片目の意)という訓読みがあり、そこから動詞形の「すがめる」が生まれました。和語の読み方が定着した例です。
両目を細める場合に「眇める」を使ってもいいですか?
本来の意味では「眇める」は片目を細める動作を指すため、両目を細める場合は「細める」を使うのが正しいです。ただし、現代では誤用も広まっており、両目を意味する場合にも使われることが増えています。