乞食とは？乞食の意味
他人から金銭や食料などの施しを受ける人、またはその行為を指す言葉。本来は仏教の托鉢修行に由来するが、現代では生活困窮者やネット上で金品を要求する行為を指すことも多い。
乞食の説明
「乞食」は「こじき」と読み、基本的には他人からの施しによって生活する人やその行為を意味します。元々は仏教の托鉢（たくはつ）という修行形態が起源で、僧侶が人々から食べ物や寄付を受けることで執着を捨てる修行を行っていました。しかし時代が進むにつれて、病気や障害で働けない人々やホームレスを指す言葉として使われるようになり、現代では差別的なニュアンスが強いため、公の場で使用することは避けられる傾向にあります。近年では「ネット乞食」という造語も生まれ、SNSや動画サイトで視聴者に金銭や物品の提供を直接求める行為を指すようになり、デジタル時代ならではの新しい意味合いも持つようになりました。また、ことわざや慣用句にも数多く登場し、「乞食が米を零したよう」のように、些細なことを大げさに扱う様子や、貧しい状況がさらに悪化することを表現する際にも使われています。
言葉の持つ歴史的な深さと、時代によって変化する使い方の面白さを感じますね。ネット社会ならではの新しい表現も生まれていて、日本語の豊かさを改めて実感します。
乞食の由来・語源
「乞食」の語源は、仏教用語の「乞食（こつじき）」に由来します。これはサンスクリット語の「bhikṣu（比丘）」の訳語で、元々は僧侶が修行の一環として家々を巡り、食べ物や施しを受ける托鉢（たくはつ）を指していました。中国から日本に伝わった際、「こつじき」が転じて「こじき」という読み方になり、次第に宗教的な意味合いが薄れ、生活に困窮して物乞いをする人を指すようになりました。江戸時代にはすでに現在の意味で使われており、浮世絵や文学作品にも貧民層として描かれるようになります。
一つの言葉が時代とともにこれほど多様な意味と用法を発展させるのは、日本語の豊かさを感じさせますね。
乞食の豆知識
面白い豆知識として、日本のことわざには「乞食」を使った表現が多数存在します。例えば「乞食も三日すれば忘れられぬ」は、一度味わった楽な生活はやめられないという意味で、人間の心理を巧みに表現しています。また「乞食の銭勘定」は、貧しいながらも細かい計算にこだわる様子を諷刺した言葉。さらに戦国時代には、実際に乞食に扮して敵地に潜入する「乞食作戦」が行われた記録も残っており、歴史的にも様々な場面でこの言葉が使われてきました。
乞食のエピソード・逸話
有名なエピソードとして、戦国武将の豊臣秀吉にまつわる話があります。秀吉は若い頃、実際に乞食同然の生活をしていた時期がありましたが、その経験から民衆の気持ちを理解する政治家になったと言われています。また現代では、人気俳優の故・渥美清さんが『男はつらいよ』シリーズで演じた車寅次郎も、時折乞食のような格好でふらりと故郷に帰ってくるキャラクターとして愛されました。さらに仏教の世界では、弘法大師空海が唐で修行中、乞食行を実践して悟りを深めたという逸話も伝えられています。
乞食の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「乞食」は日本語の語彙体系において興味深い特徴を持っています。まず、本来の仏教用語から世俗的な意味へと意味変化（意味の一般化）を遂げた例です。また、差別語としての側面から、現代では「ホームレス」「生活困窮者」などより中立的な表現への言い換えが進んでいます。これは言語の「政治的正しさ（ポリティカル・コレクトネス）」の影響と言えるでしょう。さらに「ネット乞食」のような新造語が生まれたことは、既存の語彙がデジタル時代の新しい現象を表現するために転用されるという、言語の経済性と創造性をよく示しています。
乞食の例文
- 1 給料日前になると、つい同僚に『お昼ご飯おごってよ』と乞食みたいなこと言っちゃうよね
- 2 SNSで友達の旅行写真見て、『お土産ちょうだい』ってコメントしちゃうの、現代版ネット乞食かも
- 3 彼氏に『ディナー奢って』ってお願いするとき、なんだか乞食みたいでちょっと後悔することある
- 4 親に『今月ちょっと厳しくて…』と言いながら仕送り増やしてもらうの、大人の乞食だなって自分で思う
- 5 飲み会の二次会で『誰かタクシー代貸して』ってお願いするとき、みんな内心乞食だなって思ってるよね
「乞食」の歴史的背景と社会的位置づけ
「乞食」という存在は、日本の歴史において常に社会の周縁部に位置づけられてきました。中世から近世にかけて、乞食は時に「非人」と呼ばれる被差別民と重なる存在として扱われ、特定の地域に居住を制限されることもありました。江戸時代には、幕府によって乞食取締りの法令がたびたび発布され、職業としての乞食は厳しく規制されていました。
しかし一方で、仏教の影響から施しを行うことが功徳になるとの考えも広まっており、乞食に対する人々の態度は複雑なものでした。現代では、生活保護制度などの社会保障の整備により、路上での物乞いは減少しましたが、新たな形の「ネット乞食」が出現するなど、その形態は時代とともに変化しています。
関連用語と類語の使い分け
| 用語 | 意味 | 使用場面 |
|---|---|---|
| ホームレス | 定住する家を持たず路上生活をする人 | 居住状態に焦点 |
| 生活困窮者 | 経済的に困難な状況にある人 | 公的な文書で使用 |
| 物乞い | 路上で物や金銭を請い求める行為 | 行為そのものに焦点 |
| 托鉢 | 僧侶が修行の一環として行う施し請い | 宗教的行為 |
これらの用語は似ているようで、それぞれニュアンスが異なります。特に公的な場面では、差別的なニュアンスを含む「乞食」ではなく、「生活困窮者」などの中立的な表現を使用することが適切です。
現代社会における「ネット乞食」の実態
インターネットの普及に伴い、新たな形態の乞食行為として「ネット乞食」が出現しました。これはSNSや動画配信サイトなどを通じて、不特定多数のユーザーに金銭や物品の提供を直接求める行為を指します。
- 配信者による「スーパーチャット」や「投げ銭」の積極的な要求
- SNSでの金銭的要求や物品の提供依頼
- クラウドファンディングの濫用
- 虚偽の事情を装った金銭的要求
ネット乞食は、従来の路上での物乞いとは異なり、匿名性が高く、より広範囲に影響を及ぼす可能性があるため、新しい社会問題として注目されています。
よくある質問（FAQ）
「乞食」と「ホームレス」の違いは何ですか？
「乞食」は他人から物や金銭を請い求める行為や人を指すのに対し、「ホームレス」は住居を持たず路上生活をする人を指します。乞食は行為に焦点があり、ホームレスは居住状態に焦点がある点が大きな違いです。ただし、ホームレスの人が乞食行為を行う場合もありますが、すべてのホームレスの人が乞食をするわけではありません。
「ネット乞食」とは具体的にどんな行為ですか？
ネット乞食とは、SNSや動画配信サイトなどで視聴者に金銭や物品の提供を直接求める行為を指します。具体例としては、配信者による「スーパーチャットで応援して」「欲しい物リストからプレゼント送って」といった呼びかけ、クラウドファンディングの悪用、過剰な広告収入目的のコンテンツ作成などが挙げられます。最近では新しいネット文化の一部として認知されつつあります。
なぜ「乞食」は差別用語と言われるのですか？
「乞食」が差別用語と言われるのは、貧困層や生活困窮者に対する偏見や蔑視のニュアンスを含むためです。この言葉を使うことで、経済的に苦しい立場の人々を一段低く見下す表現となり、社会的スティグマ（烙印）を強化する恐れがあります。現代ではより中立的な「生活困窮者」「ホームレス」などの表現を使用することが推奨されています。
仏教の「托鉢」と「乞食」は同じものですか？
起源的には同じですが、現代では意味合いが異なります。托鉢は僧侶が修行の一環として行う宗教的行為で、人々に功徳を積む機会を提供する意味合いがあります。一方、乞食は世俗的な物乞い行為を指し、宗教的意義はありません。托鉢は相互利益の関係ですが、乞食は一方的な施しを求める点が大きく異なります。
ことわざで使われる「乞食」と実際の乞食は関係ありますか？
ことわざに登場する「乞食」は、実際の乞食行為から派生した比喩的表现です。例えば「乞食も三日すれば忘れられぬ」は、楽な生活に慣れると元の生活に戻れなくなる人間心理を、「乞食の銭勘定」は貧しいながらも細かいことにこだわる様子を諷刺しています。これらのことわざは、乞食という存在を通じて普遍的な人間の本性や社会の様相を描き出していると言えるでしょう。