仕舞うとは?仕舞うの意味
物事を完了させる、収納する、望まない形で終わらせる、動作を強調するという4つの主要な意味を持つ動詞
仕舞うの説明
「仕舞う」は、「する」の連用形「し」と「舞う」が組み合わさってできた言葉で、室町時代から使われてきた歴史のある表現です。基本的には「物事を終わらせる」「きちんと収める」という意味ですが、実はもっと細かいニュアンスがあります。例えば「しまった!」という悔しい時の表現も、実は「仕舞った」が語源。ただし、能楽の「仕舞」とは関係がないので注意が必要です。日常的にはひらがなで「しまう」と書かれることが多く、「忘れてしまう」「なくしてしまう」のように、思わぬ形で物事が終わってしまった時の表現としてもよく使われます。命令形で「やってしまいなさい」と言うと、単なる指示ではなく「完全に終わらせなさい」という強いニュアンスが加わるのも特徴的です。
普段何気なく使っている言葉にも、こんなに深い意味や使い分けがあるんですね。日本語の豊かさを再発見できる言葉です!
仕舞うの由来・語源
「仕舞う」の語源は、動詞「する」の連用形「し」と、「振る舞う」「見舞う」などの「舞う」が組み合わさって成立しました。室町時代には既に「物事をやり遂げる」「片付ける」という意味で使われており、当時の文献にもその使用例が確認できます。また、「終う」「了う」という異表記も存在し、これらは「完了する」という意味合いを強く反映しています。江戸時代には現在の「しまう」の用法がほぼ確立し、日常的に広く使われるようになりました。
一見単純な言葉にも、深い歴史と豊かな表現の広がりがあるんですね!
仕舞うの豆知識
「仕舞う」と「片付ける」の使い分けには面白いポイントがあります。「仕舞う」は元々散らかっていないものや抽象的なものを収める場合に使われ(例:お金を財布に仕舞う、思い出を胸に仕舞う)、「片付ける」は散乱したものを整理する場合に適しています。また、能楽の「仕舞」は装飾を付けずに謡いだけで舞う形式ですが、これは「仕舞う」とは語源が異なり、単に読みが同じ漢字を当てたものと言われています。さらに、失敗した時に言う「しまった!」は漢字で書くと「仕舞った」ですが、これは「終わってしまった」という完了の意味から来ているのです。
仕舞うのエピソード・逸話
作家の夏目漱石は『吾輩は猫である』の中で「仕舞う」を巧みに使用しています。特に、猫の視点から人間の行動を観察する場面で「主人は書斎に引き上げて仕舞った」などと描写し、人物の動作の完了を印象的に表現しています。また、歌手の美空ひばりは「悲しい酒」の歌詞で「泣きたい気持ちを胸にしまって」と歌い、感情を内に収める様を「しまう」で表現しました。このように、文学作品や歌詞の中で「仕舞う」は、物理的な動作だけでなく、心理的なニュアンスを表現する言葉としても重宝されてきたのです。
仕舞うの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「仕舞う」は補助動詞としての用法が特徴的です。現代日本語では「てしまう」の形で、①完了(読んでしまう)、②不本意な結果(忘れてしまう)、③強調(やってしまう)という3つの機能を担います。これは文法化の典型例で、本来の実質的な意味から、文法的な機能を持つようになった過程を示しています。また、「仕舞う」と「片付ける」の意味の違いは、語彙的意味論の観点から分析でき、前者が「適切な場所への移動」に焦点があるのに対し、後者は「乱れた状態からの秩序化」に重点があります。歴史的には、中世日本語で「しはふ」から「しまう」へと音韻変化し、現代の形に定着しました。
仕舞うの例文
- 1 せっかく作った料理をうっかり落としてしまって、がっかりして仕舞った
- 2 明日の会議の書類を探そうとしたら、きちんと仕舞いすぎてどこに置いたか忘れてしまった
- 3 冬服を全部仕舞った翌日に、急に寒くなってしまい、また出さなきゃいけなくなった
- 4 子供がせっかく片付けたおもちゃを、また全部出して仕舞って、思わずため息が出た
- 5 大事な書類を『後で見る』ととっておいたら、他の書類の下に仕舞われていて、提出期限に間に合わなくなりそうになった
「仕舞う」の使い分けポイント
「仕舞う」と「片付ける」は似ているようで、実は明確な使い分けのポイントがあります。状況に応じて適切な表現を選ぶことで、より正確なニュアンスを伝えられますよ。
| 状況 | 仕舞うが適切な場合 | 片付けるが適切な場合 |
|---|---|---|
| 物を収納する | 財布にお金を仕舞う | 散らかった部屋を片付ける |
| 抽象的な概念 | 思い出を胸に仕舞う | ー |
| 元々整理されている | 書類を引き出しに仕舞う | ー |
| 散乱状態からの整理 | ー | おもちゃを片付ける |
基本的に「仕舞う」は「適切な場所への移動」に重点があり、「片付ける」は「乱れた状態からの秩序化」に重点があります。この違いを理解すると、自然な日本語表現ができるようになります。
現代における「仕舞う」の変化と注意点
現代日本語では「仕舞う」の使用にいくつかの変化が見られます。特に若い世代では、漢字表記よりひらがなの「しまう」がより一般的に使われる傾向があります。
- 補助動詞としての「〜てしまう」は、ほぼ100%ひらがな表記が主流
- 「仕舞う」の漢字表記は、格式ばった文書や文学的作品で見られることが多い
- 「しまった!」という感嘆詞は、漢字で書かれることはほとんどない
- 能楽の「仕舞」と混同しないよう注意が必要
また、方言によっても使い方が異なり、関西地方では「しまいなはれ」などの独特な表現があります。標準語と方言の違いを知っておくと、より深く日本語を理解できますね。
関連用語と類語表現
「仕舞う」には多くの類語があり、微妙なニュアンスの違いで使い分けられています。状況に応じて最適な表現を選びましょう。
- 収納する:体系的に整理して保管する意味が強い
- 保管する:一時的に預かっておくニュアンス
- しまう(ひらがな):よりカジュアルで日常的な表現
- 納める:公的な場所や正当な位置に収める意味
- しまう(漢字):格式ばった、または文学的な表現
これらの類語を適切に使い分けることで、より豊かな表現が可能になります。特にビジネスシーンでは、状況に応じて「収納する」「保管する」「納める」などを使い分けると良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
「仕舞う」と「片付ける」の違いは何ですか?
「仕舞う」は物を適切な場所に収納する行為に焦点があり、元々散らかっていないものにも使えます。一方「片付ける」は散乱した状態から整理整頓する意味合いが強く、元々乱れていた状況を改善するニュアンスがあります。例えば「思い出を胸に仕舞う」とは言えますが「胸に片付ける」とは言いません。
「しまった!」と「仕舞う」は関係ありますか?
はい、深い関係があります。「しまった!」は「仕舞った」が語源で、物事が望まない形で終わってしまったという完了の意味から来ています。失敗した時に「終わってしまった」という気持ちを表現する言葉として発展しました。
「てしまう」と書くとき、ひらがなと漢字では意味が違いますか?
基本的な意味は同じですが、ニュアンスが異なります。ひらがなの「てしまう」は「忘れてしまう」のように不本意な結果や完了を表すことが多く、漢字の「て仕舞う」は「やって仕舞う」のように意志的な完了を強調する傾向があります。ただし、現代ではひらがな表記が一般的です。
能楽の「仕舞」と「仕舞う」は同じ語源ですか?
いいえ、語源は異なります。能楽の「仕舞」は「終わりの舞」という意味で、読みが同じ漢字を当てたものと言われています。一方、動詞の「仕舞う」は「する+舞う」の組み合わせから来ており、別の由来を持つ言葉です。
「仕舞う」の丁寧語や敬語表現はどうなりますか?
丁寧語では「お仕舞いになります」「お仕舞いください」、謙譲語では「仕舞わせていただきます」などと表現します。ただし、日常的には「片付けます」「おしまいになります」などの言い換えが使われることも多いです。状況に応じて適切な表現を選びましょう。