「労う」とは?意味や使い方をご紹介

普段の生活を送る中で何気なく使っている言葉ほど殊更に注意を向ける機会はほとんどありません。労うもそんな言葉の一つに数えられるでしょう。ここでは労うについて、語源や意味、使い方についてできるだけ詳しく紹介していきたいと思います。

目次

  1. 「労う」の由来と派生語
  2. 「労う」の使い方は?制限はないの?
  3. 「労う」の類語は?年上でも大丈夫?
  4. 「労う」についてのまとめ

「労う」の由来と派生語

「労う」の由来

その由来は、何と奈良時代にまで遡ることができます。古語で「労ぐ(ねぐ)」は、神の心を鎮めて御加護を祈念するという意味でした。それと同時に、相手が行ってくれたことに対していたわりの意味を示す言葉として用いられたそうです。「摂津風土記」、「万葉集(九七三)」や海野十三著・「空襲葬送曲」にその用例を見ることができます。
 

”福(さきはい)をねぎ給いき”

(現代語訳)これからの幸せを祈願なさった。
 
”天皇朕(すめらわれ) 珍(うづ)の御手(みて)もち かき撫で そねぎ給ふ”
 
(現代語訳)天皇として存在するわたしは、高貴な御手で節度使たちの髪を撫でねぎらってやろう。
 
”「おう、郵どん、ご苦労だな」長造が、古い馴染みの集配人を労った。「判子を、ちょいと、出しとくれ」” 

「労ぐ(ねぐ)」の派生語

「労う」は、「労ぐ(ねぐ)」から派生して誕生した言葉の一つだと言われています。「ねがふ(願う)」も、「禰宜(ねぎ)」も元を辿れば同じです。ちなみに、「禰宜」は神社の職位を示す言葉であり、宮司を補佐する役職として知られています。

改めて考えてみると、「願う」も「禰宜」も根底にあるものは同じだと分かります。そこには高貴なものに対して何かを伝えることを意味しているからです。一心不乱に何かを願う人の姿、そして神殿で禰宜さんが祝詞を奏上する姿が重なって見えてきます。
 

「労う」の使い方は?制限はないの?

実は、「労う」が使える対象にはある制約があります。使用できる対象は、自分と同年齢か同等の立場、また自分よりも年齢や社会的地位が下である場合に限られているようです。次にいくつか例文を示します。
 

  • 無事に大きな仕事を果たし、部長から労いの言葉をいただきました。
  • プロジェクトが無事に終了したことを祝して労いの会を一席設けました。
  • 父から労いの言葉とともに「何か子どもに好きな物を買ってやれ」と渡されました。

これは先に紹介した「労う」の語源と関わりが少なくありません。ですから、自分よりも年齢や社会的地位が上の対象に対して使うことは憚られるのでしょう。無意識のうちに私たちは、過去の経験から場面に応じた言葉の選択を行っているのです。

「労う」の類語は?年上でも大丈夫?

自分よりも年齢や社会的地位が上の相手に対しては「労う」という言葉を使えません。では、同じような意味を伝えたい場合に、そのような相手に対してどんな言葉をかければいいのでしょうか。

労を惜しまず尽くしていただいたことについて、かける言葉は一つしかありません。おそらく、多くの人々がある言葉を頭に思い浮かべていると思います。そうです、「感謝」という言葉です。これならば、年齢や社会的地位が異なっても下に示すように汎用性が高いので、気にせずに使えます。
 

  • 全然お役に立てていないのに、多岐にわたってお気遣いいただき感謝申し上げます。
  • いつも至らない点をサポートしていただき、感謝し尽くしてもしたりない思いです。
  • このような会を開いていただき心より感謝しております。

「労う」についてのまとめ

「労う」は大きな仕事を成し遂げた際などに、よく聞かれる言葉です。しかし、私たちは気付かないうちにその状況によって使い分けを行っています。すなわち、相手が自分よりも年齢や社会的地位が上であれば、無意識に「労う」という言葉を選択していないのです。

これには「労う」の語源である「労ぐ(ねぐ)」との関わりが少なくないでしょう。そのため、不特定多数の相手に対して同様の言葉をかける際には、「感謝」という言葉を使うことをおすすめします。これならば、いろんな言葉と組み合わせることによって、汎用的な使い方ができます。

言葉の用い方によって、相手に不快な思いをさせるだけではなく、あなたの人間性を損ねてしまうおそれも生じます。使う前に、辞書でしっかりと確認したいものですね。


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