「鞭」とは?意味や「鞭を使った刑」についてもご紹介

皆さんは鞭(むち)にどんなイメージを持っていますか?“こわい”“痛い”というようなマイナスな想像をする方が多いかもしれません。鞭は、昔、刑罰に使われたり、動物に使用すされるというイメージがありますよね。今回はそんな鞭についてのご紹介です。

目次

  1. 鞭の意味
  2. 鞭を使った言葉
  3. 鞭を用いたことわざ
  4. 鞭を使用した刑罰
  5. まとめ

鞭の意味

鞭は“道具”“比喩的な表現”の二つの意味で用いられます。

道具としての鞭

①馬などを打って進ませるためや刑罰として人を打ち据えるのに使う、革または竹・木・籐(ラタン)で作った細長いもの。
②人に物を指し示すときに使う細長いもの。

というように、道具の一種である「棒」のことをさします。

比喩的な表現としての鞭

人を教導するための、師や親などのきびしい言葉や行為のことをさします。「愛の鞭」という言葉は、この意味を用いたものです。

鞭を使った言葉

鞭を使った言葉の歴史は古く、古典にも登場します。

鞭鐙を合わす(むちあぶみをあわす)

馬に乗って速く走らせるために、鞭を打つのに合わせて鐙で馬の腹をけること。
 

“その勢五百余騎、鞭あぶみを合はせて追つかけたてまつる” 平家物語より

鞭の加持(むちのかじ)

競馬(くらべうま)に勝つように神仏に祈ること。

鞭を揚ぐ(むちをあぐ)

馬を走らせるために鞭を振り上げること。
 

“仲国竜の御馬給はつて、名月に鞭を上げ、そことも知らずあこがれ行く” 平家物語より

鞭を用いたことわざ

鞭を比喩的に用いたことわざも多くあります。

飴と鞭

「飴」は譲歩、「鞭」は弾圧を表し、甘い面と厳しい面の両方のことをいいます。「人参と鞭」と表現することもあります。もとは、鉄血宰相と呼ばれたビスマルク(19世紀のプロイセン首相)の政策を評したことばです。
 
ビスマルクが社会保険制度によって労働者を優遇する一方、社会主義者鎮圧法を制定したことから、心地よい生活条件と厳しい弾圧を併用する政治技術のことをさすようになりました。そこから転じて「おだてとおどしを利用すること」という意味で使われるようになりました。
 
「子どものしつけには飴と鞭が必要だ」「飴と鞭の経営方針では優秀な社員は育たない」など、日常生活でもよく耳にすることわざの一つではないかと思います。

死屍に鞭打つ

死体に鞭を打って生前の恨みを晴らすという意味から、死んだ人の言行を非難することを表すようになりました。「この文章を公開すると死屍に鞭打つことになる」というように用います。さらに意味を強めて「死屍を鞭打つ」という場合もあります。

先鞭(せんべん)を付ける

人より先に馬に鞭を打って戦場に赴き功名を立てようとすることから、人より先に着手することを言います。「先鞭を打つ」は誤りです。「行政改革の先鞭を付ける」「A社に先鞭をつけられる」のように、その先見の明をプラスに評価して使います。

老骨に鞭打つ

「老骨」は年老いた体、「鞭打つ」は励まし、奮い立たせることを表し、老いて心身ともに衰えた自分を励まして、何かのために努力することを言います。

 

「老骨に鞭打って知事選に出馬することにした」など、高齢の人が自らのことをへりくだっていうときに使います。

鞭を使用した刑罰

鞭(むち)を用いた刑には笞(ち)と杖(じょう)と呼ばれるものがあります。これらは、中国古代からの刑で、五刑、五罪といわれている刑罰の一種です。

五刑(五罪)とは

中国古代の刑罰で、律(古代東アジア諸国の刑法典)に規定された主な刑のことです。唐以降の律では、笞(ち)・杖(じょう)・徒(ず)・流(る)・死(し)の五種の刑をさしました。

 

笞・杖・徒は各5等、流は遠・中・近の3等、死は絞(こう)・斬(ざん)の2等の計20等級にわけられていました。日本でも律令制でこれにならっており、「日本書紀」天武5年(676)8月条にも死・流・徒についての記述があります。

笞(笞刑、笞罪)

笞とは、五刑のうち最も軽い刑で、節を削った笞(木の枝)を使って体を打つ刑罰のことです。
 
笞10回から笞50回まで10回ごと5等級にわけられ、長さ3尺5寸(約105㎝)、手もとの直径3分(約9㎜)、先端の直径2分(約6㎜)の枝(笞杖)を用いて臀部(でんぶ=尻の部分)を打つことになっていました。
 
日本でも、明治初年の刑法典である「仮刑律」「新律鋼領」において正刑の一つとして採用されていましたが、明治51872)年にこの刑に代わり懲役刑が行われることになりました。よって現在の日本においては、このような刑罰はありません。

杖(杖刑・杖罪)

杖とは、五刑のうち笞についで軽い刑で、笞と同じく、節を削った笞(杖)で体を打つ刑罰のことです。

 

杖60回から杖100回まで10回ごと5等級にわけられていました。杖刑に用いる杖は、笞杖よりも一まわり太く、長さ3尺6寸(約106㎝)、手もとの直径4分(約12㎜)、先の直径3分(約9㎜)で、この杖を用いて臀部(でんぶ=尻の部分)を打つことになっていました。

 

杖刑も笞刑と同様に、日本でも採用されていましたが、懲役刑へ移行しました。

まとめ

道具としての鞭は痛い・怖いなどのイメージがあるかもしれませんが、、比喩表現としての鞭は「愛の鞭」など、人を教え導くための厳しくも愛情にあふれた言動を表すなどの言葉もあります。


自分自身や相手を励まし、奮いたたせ、人生を前向きに進めるような「鞭」をふるっていきたいものですね。


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