「噎せる(むせる)」とは?意味や使い方をご紹介

「噎せる(むせる)」という言葉をご存知でしょうか。誰しも一度は、急いで飲み込もうとした食べ物が気管のほうへ入りかけて「噎せた」経験があることでしょう。「咽せる」という字も使います。ここでは、「噎せる」の意味や使い方について、医学的な観点も含めて解説します。

目次

  1. 「噎せる」の意味
  2. 「噎せる」の使い方
  3. 医学的に見る「噎せる」

「噎せる」の意味

「噎せる(むせる)」とは、「気管に異物が入るなどして、喉がふさがる感じする」ことを意味する言葉です。「噎せぶ(むせぶ)」ともいいます。

また、実際に何か異物が入ったわけではなくても、悲しみや嬉しさなど、感情で心がいっぱいになって胸がふさがり、涙が出てくるような反応のことも「噎せる」と言います。

呼吸の際の空気の通り道である気管がふさがる(ふさがりかける)と、息がしにくくなり、とても苦しくなって反射的に咳き込んでしまいますが、「噎せる」は、いわばそのような咳が出る直前の反応を言います。

「咽せる」とも書く

「噎せる」は「咽せる」とも書き、どちらを使っても意味は同じです(「咽る」とも書きます)。一般には、「むせる」とひらがなで書かれることが多いかもしれません。

「咽」の字は「口」と「因→飲」に通じて「のむ」や「のど」のこと。「噎」の字は一説には「口に栓をする」意と考えられ、「食事がのどにつまる、むせぶ」の意です。

「噎せる」の使い方

何か気管に入り込んで起こる場合の「噎せる」の原因となるものは、飲食物のほか、自分で流した涙、煙などに代表される刺激を持つ香気などです。また、飲食物で「噎せる」場合、創作物の中では「慌てること」や「動揺」を表す代表的な表現でもあります。

一方、感情によって「噎せる」場合、その原因となるものは自由に呼吸ができなくなるほどの強い情感です。絶望や悲哀であることが多いですが、嬉し涙という言葉もあるように、嬉しくてたまらないことにも使えます。

基本的には無意識の反応であり、わざとそういう振りをする場合を除いて、自分から「噎せる」ということはありません。

「噎せる」に関係する言い回し

  • 噎せ返る(むせかえる)…非常にむせる。続けてむせる。あるいは、強くむせび泣く。暑さなどで蒸して息苦しくなるという意味もある。
  • 噎び泣く(むせびなく)…声を詰まらせ、しゃくりあげるように激しく泣く。人間以外にも、風の音などにも使われる。
  • 噎せ入る(むせいる)…ひどくむせること。

例文

  • お茶を飲んでいるときにいきなり声をかけられて、噎せた
  • ウイスキーを飲もうとしたら、高いアルコールの香気が喉を直撃して噎せてしまった。
  • 彼が大事にしている温室の中は、さまざまな花の香りに満ちていて、噎せ返るようだった。
  • 悲しい報せを受け取った母親は、その場で膝を折って噎び泣いた

医学的に見る「噎せる」

「噎せる」は防御反応

人間がものを飲み込む(嚥下:えんげ)というシステムには、口蓋や舌、喉周辺の筋肉・神経など複数の要素が関わっており、それぞれが連携して、固形物の通り道と空気の通り道をすばやく無意識に分けています。

しかし、時に、この連携がうまくいかず飲み込もうとするものが誤って気管へ入っていくこと(誤嚥:ごえん)があります。「噎せる」という反応は、物を気管の外へ出して誤嚥を防ぐための反射(咳嗽反射:がいそうはんしゃ)であり、身を守るための防御反応です。

固形物でなくても、煙などの有害な物質や刺激物などについても、気管から追い出そうとして噎せて咳き込むことがあります。

よく「噎せる」ようなら要注意

加齢や病気などにより、噛む力が弱くなったり、筋肉が衰えて嚥下のシステムがうまく働かず、誤嚥しやすくなったり、咳嗽反射の機能が低下することがあり、異物が肺に入り込み、ひどい場合は「誤嚥性肺炎」という病気を引き起こす可能性があります。

食事の際などによく「噎せる」という方は、ゆっくり落ち着いて食べることを心がけ、心配であれば病院で診察を受けるなどしたほうがよいでしょう。


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