「奉る」とは?意味や使い方をご紹介

「奉る」という言葉の意味をご存じでしょうか。「奉」には、奉仕、奉納といった熟語があるように、ちょっとかしこまった感じがしませんか。「奉る」には、いろいろな意味があって用途の広い言葉です。この記事では「奉る」について、意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「奉る」とは
  2. 「奉る」の使い方
  3. 「奉る」の類語

「奉る」とは

「奉る(たてまつる)」には、大きく分けると以下のような意味があります。

  1. (自分よりも上の立場の人や神仏に物を差し出す時、受け手を敬って「おくる。やる」の謙譲語として)差し上げる。献上する。
  2. うわべだけは敬うふりをして、相手を高い位置につける。祭り上げる。
  3. (動詞の連用形に付いて謙譲の意を添えて、相手を敬って)~申し上げる。~差し上げる。
  4. (3から派生した「飲む・食う・着る・乗る」の尊敬語)召し上がる。お召しになる。お乗りになる。

「奉る」には、「たてまつ-る。たいまつ-る。まつ-る」という読み方があります。この中で「たいまつ-る」は、「たてまつ-る」の音が変化したものですが、現在、この読み方の例は見られません。

また、神仏に物を奉納することが「祭る」の原義と考えられていることから、「奉る(まつる)」と同じ語源と言われています。

「奉る」の使い方

「奉る」の意味を見ていると、現在はあまり使われないようなものもありますが、以下では4つの意味のうち、現在でも使われることがある1から3の意味の使い方をご紹介します。

1の意味「差し上げる」「献上する」

1の意味では、「祭る」の原義とも関連があり、神仏に対する宗教的な儀式や慣習で使われるほか、転じて、自分より上位の人間に対して物を贈ったりするときに使われます。

【例文】

  • 私の家では、毎朝、父が神棚にお供え物を奉ることになっています。
  • 神職養成所で、神に供物を奉る所作を繰り返し練習した。
  • 昔、中国では皇帝の即位やお祝い事の時に臣下が詩や文章を奉る風習があったそうだ。

2の意味「祭り上げる」

2の意味での「祭り上げる」は、周りの人間が示し合わせたり、おだてたりして、本人が拒めないようにしておいて、否応なしに高い地位に就かせることです。

実力があるのに控えめな人に対して使う場合もありますが、誰もがやりたくないことを誰か一人に押し付けるような場合にも使います。

【例文】

  • 私の会社では、昔、倒産の危機を救った社員が英雄として奉られている。
  • 面倒くさがって誰もやらないサークルの代表者にA君を奉る話が一部のメンバーから出ている。

3の意味「謙譲語」

謙譲語としての「奉る」は、相手に対する敬いの気持ちを表しますが、かなり堅苦しい感じのする言葉ですから、日常会話で使うことはほとんどありません。歌舞伎の口上や昔の人の年賀状の文言などではよく使われています。

【例文】

  • 「隅から隅まで、ずずずい~っと希い(こいねがい)上げ奉りまする」というのは、歌舞伎の口上の定型だそうだ。
  • 祖父の遺品を整理していたら、古い年賀状に「本年も相変わらずのご厚情、よろしく申し上げ奉ります」って書いてあった。

「奉る」の類語

「献呈」

「献呈(けんてい)」は、目上の人に物をさしあげることやお礼で物を贈ることです。自分と同格か目下の人に物を贈る場合には「贈呈」を使うことが多いようです。

【例文】

  • これまでの研究成果をまとめた論文が一冊の本になったので、恩師に献呈した。
  • デビュー60周年を迎える歌手に献呈するため、今、新曲を書いている。

「献納」

「献納(けんのう)」は、神仏や国・地方公共団体などに必要なものなどを差し上げることです。神社や寺院で灯明や石柱に、それを献納した人や団体の名前が記されているものを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

【例文】

  • 戦時中、ある高名な画家が絵の代金を軍費として国家に献納したという話がある。
  • 町内で新しい神輿(みこし)を造って神社に献納し、長らく途絶えていた祭りが復活した。

「寄進」

「寄進(きしん)」は、神社仏閣に金品を寄付することです。「献納」に近い言葉ですが、国家などに対しては使いません。

【例文】

  • 焼失した本堂再建のために、菩提寺が屋根瓦の寄進を受け付けることになった。
  • この教会に飾られている絵の中には寄進した人が書き込まれているものがあるそうだ。


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