「万事休す」とは?意味や使い方を例文と類語で解説

「万事休す」という言葉、どこかで聞いたことはありませんか?何かをやり遂げようとあらゆる手を尽くしたのに、結局うまくいかず、もうどうにもならない…そんな絶望的な状況を表すときに使われるこの言葉。今回は、その深い意味や使い方、さらには似た表現との違いまで、詳しく解説していきます。

万事休すとは?万事休すの意味

すべての方法を試し尽くしてしまい、もはや為す術がなく、どうしようもない状態を指す慣用句です。

万事休すの説明

「万事休す」は、「万事」が「あらゆること」を、「休す」が「終わる」や「おしまい」を意味し、文字通り「すべてが終わった」という状況を表します。この言葉は中国の歴史書『宋史』に由来しており、荊南の王・高保勗の統治に対する臣下の嘆きから生まれました。高保勗の浪費や風紀の乱れにより国が滅びゆく様子を見て、臣下が「万事休す」と嘆いたという故事が基になっています。日常的には、ビジネスやスポーツなど、あらゆる手段を尽くしても打開策が見つからず、絶望的な気持ちに陥ったときに使われます。例えば、倒産回避のための努力が実らず「万事休す」となったり、試合で劣勢が覆せない状況を「万事休す」と表現したりします。

人生にはどうにもならない瞬間がありますが、そんなときこそ「万事休す」という言葉がぴったりですね。

万事休すの由来・語源

「万事休す」の由来は中国の歴史書『宋史』の「荊南高氏世家」にあります。荊南の4代目の王「高保勗(こうほうきょく)」は父王に甘やかされて育ち、政治に無関心で浪費を繰り返しました。臣下たちは彼の統治を見て「万事休す」、つまり「もはや何をしてもこの国はダメだ、終わった」と嘆いたと伝えられています。この故事から、手の施しようがなくすべてが終わってしまう状況を表す言葉として日本に伝わり、現代でも使われるようになりました。

絶望的な状況でも、そこから這い上がるのが人間の強さですね。

万事休すの豆知識

「万事休す」の「休す」を「窮す」と誤って書く人が多いですが、正しくは「休す」です。また、この言葉はスポーツの実況中継でよく使われることで知られています。例えばサッカーの試合で大量得点を許した場合や、野球で逆転の可能性がほとんどなくなった場面などで「もはや万事休すですね」といった解説が聞かれます。さらに、ビジネスの世界ではプロジェクトの失敗が確定したときなどに使われることもあります。

万事休すのエピソード・逸話

有名なエピソードとして、戦国武将の武田信玄が川中島の戦いで「万事休す」と言ったという話があります。また、現代ではプロ野球の長嶋茂雄元監督が、チームが大敗し逆転の見込みがなくなった試合後に「まさに万事休すだったよ」とコメントしたことがあります。さらに、小説家の太宰治も『人間失格』の中で主人公が絶望的な状況を「万事休す」と表現しており、文学の世界でもこの言葉が使われています。

万事休すの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「万事休す」は四字熟語の一種ですが、その構造は「万事(すべてのこと)」+「休す(終わる)」という漢語的表現から成り立っています。「休す」はサ変動詞「休す」の終止形で、現代語では「休する」という形で使われることもあります。この言葉は中世以降の日本語文献に登場し、漢文訓読の影響を受けて定着したと考えられます。また、「万事休す」は終止形で使われることがほとんどで、連体修飾語として使われることは稀という特徴があります。

万事休すの例文

  • 1 明日が締切の大事な書類を書いていたのに、パソコンが突然フリーズして保存していなかったデータが全部消えたとき、まさに万事休すだと思いました。
  • 2 旅行の直前になってパスポートの期限が切れていることに気づき、更新する時間もなく万事休すの状態になりました。
  • 3 大切なプレゼンの前日に風邪をひいて声が出なくなり、代役も見つからず万事休すだと悟った瞬間です。
  • 4 受験会場に着いたら受験票を忘れたことに気づき、家に取りに戻る時間もなく万事休すだと思いました。
  • 5 婚活パーティーでいい人と出会ったのに、連絡先を交換し忘れて後からどうしても連絡が取れなくなり、万事休すだなと感じました。

「万事休す」の正しい使い方と注意点

「万事休す」は非常に強い表現なので、使用する場面には注意が必要です。日常会話で軽々しく使うと大げさに聞こえることがあります。

  • ビジネスシーンでは「打開策が見当たりません」「もはや手の施しようがありません」などと言い換えるのが無難
  • 本当に挽回不能な状況でのみ使用する
  • 冗談や大げさな表現として使うのは避ける
  • 目上の人への使用は控えめに

また、「万事窮す」という誤表記が多いので、正しく「万事休す」と書くように心がけましょう。

関連用語と使い分け

言葉意味ニュアンス
万事休すすべてが終わり、どうにもならない最も絶望的で挽回不能
万策尽きるすべての手段を使い果たした手段は尽きたがまだ完全な終わりではない
八方塞がりどの方向にも進めない行き詰まっているが完全な終わりではない
為す術なしする方法がない具体的な手段がない状態

これらの言葉は似ていますが、絶望の度合いが異なります。「万事休す」が最も深刻で、完全な終わりを意味することを覚えておきましょう。

文学作品での使用例

「もはや万事休す、このままでは城もろとも焼け落ちるしかあるまい」

— 司馬遼太郎『国盗り物語』

文学作品では、戦国時代の合戦場面や主人公が絶体絶命のピンチに陥った場面などで「万事休す」が効果的に使われています。歴史小説や時代小説で特に頻繁に見られる表現です。

  • 戦記物語での決定的な敗北場面
  • 時代劇での主人公の窮地
  • 歴史小説での国家存亡の危機
  • 現代小説でも比喩的に使用される

よくある質問(FAQ)

「万事休す」と「万策尽きる」の違いは何ですか?

「万事休す」はすべてが終わったという絶望的な状況を強調するのに対し、「万策尽きる」はすべての手段を試したがうまくいかなかったというプロセスに重点があります。万事休すの方がより深刻で挽回不能なニュアンスが強いです。

「万事休す」をビジネスシーンで使っても大丈夫ですか?

フォーマルな場では「打開策が見当たらない」「もはや手の施しようがない」などと言い換えた方が無難です。カジュアルな会話では使えますが、深刻な状況を強調する表現なので使い方には注意が必要です。

「万事休す」の「休す」の読み方がわかりません

「きゅうす」と読みます。「休む」ではなく「休す」という特殊な読み方をするので、初めて見ると戸惑う方も多いです。語源は中国語の「休」が「終わる」という意味を持つことから来ています。

万事休すと言うほどではない、少し希望がある場合の表現は?

「八方塞がり」「苦境に立たされている」など、まだ完全に絶望的ではない状況を表す表現があります。万事休すは最後の最後、完全に詰んだ状態を指すので、程度に応じて使い分けましょう。

万事休すから這い上がった経験談はありますか?

実際に万事休す状態から復活した例として、スポーツの大逆転劇や経営危機からのV字回復などがあります。大事なのは「万事休す」と思っても諦めないこと。意外なところに突破口があるものです。