「抜きん出た」とは
「抜きん出た（ぬきんでた）」とは、「抜きん出る」という動詞の連用形「抜きん出」に、過去・完了・存続・確認の助動詞「た」が付いた言葉です。ほかにも「抽ん出た（出る）・擢んで出た（出る）」と表記されることがあります。
「抽出（ちゅうしゅつ）」「抜擢（ばってき）」という熟語からわかるように、「抽」にも「擢」にも、「引き抜く。抜き出す」という意味があり、「抜きん出た（抜きん出る）」の表記として妥当なものです。
以下の記事では、「抜きん出る」「抜きん出た」の両方の表現について解説をしていきます。
「抜きん出る/抜きん出た」の意味
- 周囲よりひときわ高く突き出ている： 「周囲のビル群の中で抜きん出た高層ビル」など
- 人並みはずれてすぐれている。秀でている：「抜きん出た才能」 「成績が学年で抜きん出る」など
- （集団などから）離れる。抜け出る：「団子状態から抜きん出る」など
- 数ある中から選び出す。抜き出す。
- 人よりも目立たせる。
いずれの意味においても「目立つ」ということが根底にある言葉です。なお、4と5の意味については、主に古典や明治文学での用例が見られますが、現代語ではほとんど使われることはありません。
「抜きん出る/抜きん出た」の使い方
- 彼女は周りの女性たちに比べて頭ひとつ抜きん出て背が高い。
- 彼の数学の才能は、教師も舌を巻くほど抜きん出たものだった。
- オリンピックや世界大会に出場できるのは、スポーツ選手の中でも特に抜きん出た才能と技量を持った者に限られる。
- 第4コーナーまで集団で走っていた馬の中から、全く予想外の馬が抜きん出てそのままゴールした。
- 今度の新作は、その作家の作品の中でも抜きん出た秀作だと、高い評価を受けている。
「抜きん出る/抜きん出た」の類語
「抜きん出る/抜きん出た」には数多くの類語がありますが、ここではその一部を紹介します。
「突出する/突出した」
「突出（とっしゅつ）」とは、書いて字のごとく「突き出る」ということで、「高く、あるいは長く突き出していること。突き破って出ること。他より目立って多いこと」などを意味しています。「突き出る。目立って多い」などの意味で類語と言えるでしょう。
【例文】
- 今年度の予算案は、世界的な伝染病の影響で医療関係部門が突出している。
- 日本は、食料自給率が低いため、食料の輸入率が先進国の中でも突出したものになっている。
「際立つ/際立った」
「際（きわ）立つ/際立った」は、「ほかとの区別がはっきりしていて、よく目立つ」という意味を持っています。「目立つ」という点で類語と言えるでしょう。
「際」も「立つ」も多義語ですが、「際」には「境目（さかいめ）。ものの端（はし）」という意味があり、「立つ」には「はっきり表れる」という意味があることから、「区別がはっきりしている」という意味になったようです。
【例文】
- ドラフト1位に指名されたAくんは、高校球児としては際立った実力の持ち主だった。
- 新しい演出で上演された『ハムレット』では、オフィーリア役の若手女優の演技が際立っていた。
「卓越した」
「卓越（たくえつ）」とは、「ほかよりもはるかに優（すぐ）れていることや、そのようす」を意味します。「卓」にも「越」にも「すぐれている。抜きん出ている」という意味があります。これも類語と言えるでしょう。
【例文】
- A氏は、卓越した指導力と判断力を持ったリーダーだ。
- 今度の芸術祭のソリストは卓越した技量の持ち主で、超絶技巧が必要な曲を難なく演奏した。
「ピカイチ」
「ピカイチ」は、「多くの中で最も優れていることや、そのもの。抜きん出る」を表す言葉です。漢字で「光一」と書きますが、その語源は花札にあります。
花札で、初めに配られる7枚が、「ひかりもの」と呼ばれる20点札1枚とカス札6枚という組み合わせの時に同情点をもらえる役のことことを「光一（ピカイチ）」と言います。そこから転じて、上記の意味を持つようになりました。
【例文】
- パーティーの出席者の中で、彼女のファッションがピカイチだったよ。
- 今度来た外科医は、腕はピカイチだが、横柄な態度にはみんな閉口している。