「そこはかとなく」とは?意味や使い方をご紹介

「そこはかとなく」という言葉は、日常会話ではあまり使われませんが、文章、わけても小説や詩などの文芸作品の中にはよく登場します。古語に由来し、今なお用いられている希少な言葉のひとつです。今回は「そこはかとなく」の意味と使い方を類語と共にご紹介します。

目次

  1. 「そこはかとなく」とは?
  2. 「そこはかとなく」の使い方
  3. 「そこはかとなく」の類語
  4. 「そこはかとなく」のまとめ

「そこはかとなく」とは?

「そこはかとなく」は、古語でありながら現在も生き残っている希少な言葉のひとつです。「そこはかとない」という形容詞の連用形ですので、まずは「そこはかとない」から解説していきましょう。

「そこはかとない」は、古語「そこはかとなし」に由来します。この「そこはかとなし」は、大きく分けて以下のの3つの意味をもつ言葉です。

  1. わけがはっきりしないままに、全体的にそう感じるさま。なんとなく何かがあるように感じられるさま
  2. なんということもない、とりとめない。
  3. 際限がない。

上記2と3の意味は、現代日本語では使われなくなっています。「そこはかとなく」の意味として残っているのは、「そこはかとなし」の1の意味です。

したがって「そこはかとなく」とは、理由や根拠もこれといってなく、特定できるものではないが、なんとなくそのような雰囲気が漂う感じ、といった意味を表します。曖昧で、ぼんやり、うっすらとなにかが漂うようなイメージです。

「そこはかとなく」の語源

「そこはかとなく」の語源は、「其処は彼と無く」。「其処」は「そこ」、「彼」は「か」と読みます。「そこに彼(誰か)がいるのかどうか判別できない」という意味の古語です。

その由来から、「そこはかとなく」は、おぼろげで曖昧な、という意味をもつにいたりました。その成り立ちにも言葉の響きにも、昔の日本語の趣きが漂っていますね。

「そこはかとなく」の使い方

「そこはかとなく」の意味のポイントは、「根拠はないけれど」という点にあります。逆にいえば、はっきりとした理由ある事柄については使えない言葉ということです。

たとえば、「そこはかとなく春を感じる」という文章は、「春である根拠」があっては成立しません。正真正銘春の季節であったり、桜の花が咲いたのを見たのなら「そこはかとなく春を感じる」とは言えません。

とはいえ、辞書上の定義からは少しはずれ、実際にそこにある香りなどを「そこはかとなく~が香る」などのように、「かすかに、ほのかに」という意味で用いられていることも多いのが実情です。

「そこはかとなく」の文例

  • 表参道のある一画は、そこはかとなくパリの街の香りがする。
  • 帰宅すると部屋にはそこはかとなくコーヒーの香りが漂っていたので、夫がついさっきまで家にいたと推察できた。
  • このスープには、そこはかとなくローズマリーの香りがする。
  • 彼女の所作には、そこはかとなく育ちの良さがにじみでている。

「そこはかとなく」の類語

「心なしか」の意味と使い方

「心なしか」は、気のせいか、どことなく、という意味を表す言葉です。「そこはかとなく」と同様に、確たる証拠やはっきりとわかる状態ではないけれど、なんとなく…という状況を指しています。

「心なしか~だ」と言い切るかたちでも使えますし、「心なしか~のようだ」「心なしか~のように見える(感じる)」などと多様な使い方ができます。

【文例①】久しぶりに幼馴染と再会したが、心なしか元気がないように見えた。
【文例②】心なしか、彼女に避けられているように感じる。

「なんとなく」の意味と使い方

「なんとなく」は、明確な理由や目的がなく、わけもなく、という意味の言葉です。「そこはかとなく行ってみる」という使い方はできませんが、「なんとなく行ってみる」と言うことはできます。

「なんとなく」は、「そこはかとなく」と同じような意味を持ちながら、使える対象の幅が広い便利な言葉です。

【文例】このカフェはなんとなく居心地がよくて、つい長居してしまう。

「そこはかとなく」のまとめ

誰もが古典の授業で習う、吉田兼好の『徒然草』。序段の「つれづれなるままに、日くらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそもの狂ほしけれ」を暗記した人も多いことでしょう。

この「そこはかとなく」は、とりとめもなく、と解釈されており、現代日本語ではすでに使われない意味ではあります。とはいえ、鎌倉時代に使われていた古語が今なお用いられていると思うと、「そこはかとなく」嬉しくなりますね。


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