「承知いたしました」の正しい意味と使い方|ビジネス敬語の基本

ビジネスシーンでよく耳にする「承知いたしました」という言葉。丁寧な印象がありますが、どんな場面で使うのが適切なのでしょうか?また「承知しました」や「かしこまりました」との違いは何か、気になる方も多いはずです。今回はこの敬語表現の正しい使い方とニュアンスの違いについて詳しく解説します。

承知いたしましたとは?承知いたしましたの意味

事実や内容を理解し、了承したことを丁寧に伝える謙譲語表現

承知いたしましたの説明

「承知いたしました」は、「承知する」という謙譲語に「いたす」という謙譲語を重ねた二重敬語ですが、ビジネスシーンでは慣用的に使用される表現です。目上の人や取引先に対して、依頼や指示を受け入れる際に用いられ、単なる「わかりました」よりも格段に丁寧な印象を与えます。英語では「I understand」に相当し、相手の言葉を真摯に受け止めていることを示すことができます。特に電話対応やメールでの返信時に効果的で、信頼関係を築く上で重要なビジネスマナーの一つと言えるでしょう。

丁寧な印象で相手に安心感を与える、ビジネス必須の表現ですね

承知いたしましたの由来・語源

「承知いたしました」の語源は、平安時代まで遡ります。「承知」は「承る(うけたまわる)」と「知る」が組み合わさった言葉で、元々は「上の者の意見を受け入れ、理解する」という意味を持っていました。鎌倉時代には武家社会で使用され、江戸時代には商人の間で取引の承諾を表す言葉として定着しました。「いたしました」は「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語の「ます」が組み合わさったもので、明治時代以降、ビジネスシーンでより丁寧な表現として広まりました。

歴史と文化が詰まった、日本らしい丁寧な表現ですね

承知いたしましたの豆知識

面白い豆知識として、時代劇でよく耳にする「おっと合点、承知之助」というフレーズがあります。これは「承知いたしました」を軽妙に言い換えた江戸時代の洒落で、承知に「之助」という人名を付けて親しみやすくしたものです。また、国際的なビジネスシーンでは、日本の「承知いたしました」のように、承諾の表現が文化によって大きく異なります。例えば英語では「Certainly」や「Understood」が相当しますが、日本のように謙遜のニュアンスは含まれないのが特徴です。

承知いたしましたのエピソード・逸話

有名なエピソードとして、トヨタ自動車の豊田章男社長(当時)のエピソードがあります。国際会議で海外の取引先から厳しい要求をされた際、即座に「承知いたしました。課題として真摯に受け止め、改善に努めます」と応答し、相手の信頼を勝ち取ったという逸話があります。また、元首相の安倍晋三氏も外交交渉の場で、難しい要求に対し「承知いたしました。検討させていただきます」と答えることで、即答を避けつつ前向きな姿勢を示すという駆け引きを見せたことがあり、ビジネスだけでなく政治の世界でも重要な表現として使われています。

承知いたしましたの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「承知いたしました」は二重敬語の一種です。「承知する」自体が謙譲語であり、さらに「いたす」という謙譲語を重ねているため、理論上は過剰な敬語表現となります。しかし、現代日本語では慣用句として定着しており、むしろ丁寧さを強調する表現として認知されています。この現象は「敬語の化石化的用法」と呼ばれ、歴史的に定着した表現が文法規則を超えて使用される例の一つです。また、日本語の特徴である「聞き手配慮」の姿勢が強く表れており、相手への敬意と同時に、自分の立場を低く表現する日本的コミュニケーションスタイルを象徴する表現と言えます。

承知いたしましたの例文

  • 1 上司から急な残業を依頼されたとき、内心では予定が狂って焦るけど、とりあえず「承知いたしました」と返事してしまうあるある。
  • 2 取引先から難しい注文が来て、実現可能か一瞬迷うけど、まずは「承知いたしました」と受けてから暗中模索するビジネスパーソンのあるある。
  • 3 電話でクレーム対応中、お客様の長い話を全部聞いた後、とりあえず「承知いたしました」で受け止めて、その後の対応を考えるあるある。
  • 4 会議で自分には荷が重い任務を任され、内心ではドキドキしても「承知いたしました」とだけ答えて後で同僚に助けを求めるあるある。
  • 5 メールで大量の修正指示が来て、げんなりしながらも「承知いたしました。対応させていただきます」と返信してしまうあるある。

シーン別の使い分けポイント

「承知いたしました」は万能な表現ですが、状況によって適切な使い分けが必要です。特にビジネスシーンでは、相手や状況に応じて最適な表現を選ぶことで、より良いコミュニケーションが可能になります。

シーン適切な表現使用例
上司・取引先承知いたしました重要な指示を受けたとき
社内の同僚了解しました日常的な業務連絡
クレーム対応かしこまりましたお客様からの苦情受け付け
緊急時承りました急ぎの対応が必要な場合

特にクレーム対応では「承知いたしました」に加えて「申し訳ございません」を組み合わせることで、謝罪の意図を明確に伝えることが重要です。

よくある間違いと注意点

  • 二重敬語説:確かに「承知する」+「いたす」で二重敬語ですが、慣用句として定着しているため問題視されません
  • 過剰使用:同じメールで何度も使うとくどい印象になるので、バリエーションを持たせましょう
  • 謝罪不足:重大なミスに対して「承知いたしました」だけでは不十分です。必ず謝罪の言葉を添えてください
  • 口調の問題:電話では明るく、メールでは丁寧に。状況に応じたトーン使い分けが重要です

「承知いたしました」は便利な表現ですが、万能薬ではありません。状況に応じて適切な表現を使い分けることが、プロのビジネスパーソンの証です。

— ビジネスマナー講師・山田太郎氏

時代による変化と今後の展望

近年、ビジネスコミュニケーションの簡素化に伴い、「承知いたしました」の使用頻度に変化が見られます。特にIT業界やスタートアップ企業では、よりカジュアルな表現が好まれる傾向があります。

  • リモートワークの増加:チャットツールでは「了解」「OK」などの簡潔な表現が増加
  • 国際化の影響:英語の「Got it」「Noted」などの直接的な表現の影響
  • 世代間ギャップ:若手社員は丁寧すぎる表現を堅苦しく感じる傾向あり

しかし、伝統的な業界や格式を重んじる場面では、今後も「承知いたしました」の重要性は変わりません。状況に応じた適切な表現選択が、これまで以上に重要になるでしょう。

よくある質問(FAQ)

「承知いたしました」と「承知しました」はどう違いますか?

「承知いたしました」の方がより丁寧な表現です。「いたす」は「する」の謙譲語なので、二重敬語的ではありますが、ビジネスシーンでは慣用的に使われる丁寧な表現として定着しています。目上の方や重要な取引先には「承知いたしました」を使うのが無難です。

メールで「承知いたしました」を使う場合、どんな場面が適切ですか?

上司からの指示や取引先からの依頼を受け取ったとき、クレーム対応でお客様のご意見を承る場合、また会議の日程調整など、ビジネス上の重要なやり取りで使用します。ただし、社内の気心知れた同僚への返信では「了解しました」でも問題ありません。

「承知いたしました」は電話対応でどのように使えばいいですか?

電話では「はい、承知いたしました」と明るくはっきとした口調で応えるのが効果的です。特にクレーム対応では「ご指摘の件、承知いたしました」と繰り返すことで、お客様に「話を聞いてもらえた」という安心感を与えることができます。

「承知いたしました」を使うべきでない場面はありますか?

親しい友人や家族との日常会話では不自然です。また、目上の方に対してでも、重大なミスや問題を認める場合には「申し訳ございません」が先で、「承知いたしました」だけでは謝罪の意図が伝わりにくいので注意が必要です。

英語で「承知いたしました」に相当する表現は何ですか?

「Certainly」「Understood」「I will take care of it」などが近い表現です。ただし、日本語の「承知いたしました」のように謙遜のニュアンスまでは含まれないため、文化による表現の違いを理解しておくことが国際ビジネスでは重要です。