「籠絡」とは?意味や使い方をご紹介

「籠絡」の読み方をご存知ですか?どちらかというと書き言葉として使われるはので、読めないという人もいるかもしれませんね。これは「ろうらく」と読みます。今回は、この「籠絡」の意味や使い方を、類語の「懐柔」との比較も含めて解説します。

目次

  1. 「籠絡」とは
  2. 「籠絡」と「懐柔」
  3. 「籠絡」のそのほかの類語
  4. 「籠絡」の用例

「籠絡」とは

籠絡<ろうらく>」とは、「人をうまく丸め込んで自分の思いどおりに操ること」を指す言葉です。

「籠」には、こもる・こめるといった意味。他方、「絡」には、からまる・からめるといった意味があります。「籠絡」をそれぞれの字義から考えると、人の心をからめとって丸め込むといったイメージが浮かび上がるでしょう。

「籠絡」の使い方

「籠絡」は、おもに「籠絡する」という動詞形で用いられます。

  • 父を籠絡するには、好物の肴を用意するに限ると母は言っていた。
  • 不正調査のために人を送ったが、次から次へと彼女に籠絡されてしまった。
  • 彼はA議員を籠絡してその秘書に収まった。

「籠絡」と「懐柔」

「籠絡」の類する言葉に「懐柔」があります。よく比較される二語ですが、これらに違いはあるでしょうか?

「懐柔」とは

懐柔<かいじゅう>」とは、「うまいこと扱って自分の思いどおりに従わせること」を言います。簡単にいうと、「手懐ける」「抱き込む」ということです。

「懐」という字には、包み入れる・中に包み隠すといった意味があります。また、「柔」は、やわらかい・やわらげることを指しています。

それぞれの漢字の意味から考えると、「懐柔」は、相手の態度を和らげて自分の味方に引き込むといったニュアンスでしょう。

「籠絡」・「懐柔」する手段

「懐柔策」という言葉はあっても、「籠絡策」とは言いません。そこから、「懐柔」する手段は、たとえば、賄賂を贈る・特別な便宜を図るといった具体的な事柄であると推測されます。相手も「借りを作った」「目をかけられている」と認識できます。

対して、「籠絡」は、何をどうやったか説明しにくいこと。つまり、甘言・誘惑など、心の隙間に入り込むような手段に因るのかもしれません。相手にしてみれば、いつの間にか術中にはまっているようなことですね。

「籠絡」と「懐柔」の違い

ここまで説明してきたとおり、「籠絡」と「懐柔」はニュアンスの違いは考えられます。しかし、「籠絡」と「懐柔」の「うまいことやって、人を自分の思い通りにする」という意味においては、同義と言っていいでしょう。

「籠絡」のそのほかの類語

ここでは、「懐柔」以外の「籠絡」の類語を紹介します。

「掌上に運らす」

漢文に由来する「掌上に運らす<しょうじょうにめぐらす>」は、自由に操る・思いのままにするという意味。「手のひらの上で転がす」ことですね。

「手のひらの上で躍らせる」という言い回しもあります。こちらも、「手のひらの上で転がす」と意味の違いはないようです。

「手玉に取る」

「手玉<てだま>」は女の子が遊びに使う「お手玉」のこと。小さな袋に小豆などを入れたもので、幾つかを投げ上げ・受け取って遊びます。

「手玉に取る」とは、曲芸師が手玉を自在に操る様子から、手玉のように弄ぶ(もてあそぶ)かのように、人を意のままに操ることを表しています。

「籠絡」の用例

類語から「籠絡」という言葉について見てきたところで、最後にもう一度、「籠絡」の使い方を小説を見ながら確認しましょう。

『三国志 草莽の巻』

「ご当家にも、はや嫁君を迎えてよいご子息がおありですから、婚を通じて、まず、呂布の心を籠絡(ろうらく)するのです。――その縁談を、彼が受けるか受けないかで、彼の向背(こうはい)も、はっきりします」
ー吉川英治『三国志 草莽の巻』ー

上の引用の話者は紀霊(きれい)、話し相手は袁術(えんじゅつ)です。呂布(りょふ)に下邳(かひ・江蘇省北部)を奪われた劉備(りゅうび)は呂布に降ります。

これを好機と、袁術は紀霊に命じて劉備を攻撃させますが、呂布の仲裁により撤退する羽目に。袁術は、劉備を攻め損ねた紀霊に激怒します。紀霊は、自ら呂布を攻めようと息巻く袁術を宥めて、政略結婚によって呂布を籠絡すれば良いと提案するのでした。

引用したシーンの少し前、呂布の仲裁を受けた際に、紀霊は呂布の迫力にすっかり気圧されています。紀霊にしてみれば、呂布とぶつかり合うなんてとんでもない。縁を結んで、うまく操る方が良いといったところでしょう。

岡本綺堂『真鬼疑鬼』

お園と伊兵衛とはその以前から特別の関係が成立っていて、かれらは共謀して甚吉を籠絡(ろうらく)し、その懐ろの銭を搾り取って、蔭では舌を出して笑っているというのである。
ー岡本綺堂『真鬼疑鬼』ー

『真鬼疑鬼』は、『半七捕物帳』でも有名な小説家・劇作家の岡本綺堂による短編です。主人公は与力の秋山嘉平次。引用したのは、嘉平次が吟味(取り調べや事実関係の調査)をすることになっている、伊兵衛殺害事件のあらましを描いたシーンです。

下手人は、伊兵衛の幼馴染の甚吉。甚吉は伊兵衛の取り持ちで、お園の馴染みになっていました。この時点では、伊兵衛とお園の二人に良いように金を使わされていたことが犯行動機とされています。ミステリアスな物語ですので、真相はぜひ、原作でお楽しみください。


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