「夥しい」とは?意味や使い方をご紹介

「夥しい」(おびただしい)という言葉は、きわめて数や量が多いこと、また、程度が甚だしい(はなはだしい)ことを意味します。「多い」ことを表す言葉の中でも、最大級の表現のひとつです。今回は「夥しい」の意味と使い方を、言葉の由来なども含めて紹介します。

目次

  1. 「夥しい」とは?
  2. 「夥しい」の使い方
  3. 「夥しい」の由来
  4. 「夥しい」と「甚だしい」

「夥しい」とは?

現代の日本語において、「夥しい」(おびただしい)という言葉の持つ意味は、大きくわけて2つあります。1つは、数量がはかりしれないくらいに、きわめて多いこと。数量の多さの表現として、「夥しい」は最大級のものの1つです。

2つ目の意味は、程度や度合い、レベルが大きいこと。この場合、ほとんどが悪い意味で用いられます。つまり、程度や度合いをはかられているもの自体が、無責任、暴力性、などのようなネガティブなものだということです。

「夥しい」の使い方

「数量が多い」

「夥しい」の意味の1つ目、数量がきわめて多いという意味での用法について考えます。「夥しい」数といえば、どのようなものが例として挙げられるでしょうか。

たとえば、外国のニュースなどで目にすることがある、空が暗くなるほどのイナゴの大群はまさに「夥しい」数といえます。

あるいは、南極でのペンギンの群れ、砂浜を埋め尽くすがごとくの蟹の大行進…動物や虫など、群れる習性があるものたちのそんな光景は、畏怖を感じてしまうほど「夥しい」ことがあります。

「量」の多さを表す言葉としては、大量の液体を表現するときによく用いられます。石油輸送車が事故で大破したりすれば、あたりは「夥しい」石油の海になりますね。

(A男)

山道で迷ってしまった夕暮れに、夥しい数のカラスが頭の上を飛んでいったんだ。不吉な思いに襲われて、このまま遭難してしまうのかと震えたよ。

(B子)

アメリカに留学していたとき、通っていた高校で銃の乱射事件に遭遇したんです。夥しい血が教室に流れている光景がトラウマになって、今でも悪夢にうなされるの。

「程度や度合いが大きい」

程度や度合いの大きさを表現するとき、「夥しい」には、定番の言い回しがあります。「~すること」「~なこと」を前に置いて使う、というものです。

先ほども述べましたが、ほとんどの場合、悪いことにしか使わないという点には注意が必要です。非難するニュアンスがある表現であることを理解しておきましょう。

(C男)

君は僕よりずっと年上じゃないか。君の僕への態度は不躾なこと夥しく、さすがに失礼だよ。

(D子)

娘の担任の鈴木先生は、人一倍熱意ある教師なんだけれど、その分言動が激しいこと夥しくて、子供たちの評判は良くないみたい。

「夥しい」の由来

「夥しい」の言葉は、「怯ゆ(おび・ゆ)」の「おび」に、「湛ふ(たた・ふ)」の「たた」が合体した構成が由来とされています。

「怯」はおびえること、「湛」は量が多いことを意味します。したがって、「おび」+「たた」しいは、怯えるほどの量の多さ、という意味をもつにいたりました。

「夥しい」という言葉で表現されるような、あまりの数量の多さには、どこかぞくりとするような感覚を伴います。美しい花畑の表現に、「夥しい美しい花々」とはまず言いません。

「夥しい」にふさわしい表現は、「夥しい鳥の群れ」「夥しい虫」「夥しい血」…。ちょっとホラー映画のようですね。

「夥しい」と「甚だしい」

程度や度合いの大きさを表す「夥しい」の類語として「甚だしい」(はなはだしい)が挙げられます。「~すること夥しい」「~なこと夥しい」と同じような使い方では、むしろ「甚だしい」のほうが頻出です。

ただし、この二つの言葉の持つニュアンスには、若干の差があることに注意しましょう。「甚だしい」は、「夥しい」に比べて、程度においてあまりにも激しすぎる、行き過ぎる、という非難の度合いがよりいっそう強い表現です。
 

  • この仕事を一刻も早く仕上げなければならないときに、君はなにをのんびりと休憩しているんだ。無責任なこと甚だしいぞ。
  • デパートの外商部員は、上流階級の顧客のお相手を務めることが多々あるというのに、あなたは礼儀作法に無知なこと甚だしい。もっと勉強しなさい。

 

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