「業腹」とは?意味や使い方をご紹介

「業腹」をご存知でしょうか。(ごうはら)と読むこの言葉は、激しい怒りを意味します。現代では使われることが少なくなりましたが、書き言葉ではまだ健在です。古い時代の日本文学などにも頻繁に登場する「業腹」。今回は、その使い方と意味を類語をまじえてご紹介します。

目次

  1. 「業腹」とは?
  2. 「業腹」の使い方
  3. 「業腹」の類語
  4. まとめ

「業腹」とは?

業腹(ごうはら)とは、激しい怒り、きわめて腹が立つさま、しゃくにさわる、いまいましく思う、などを意味する言葉です。

現代では、話し言葉に登場することはあまりないですが、書き言葉としては健在です。とくに、昭和の半ばあたりまでの日本文学に頻繁に登場しますので、文学愛好家にはお馴染みの言葉でしょう。

小説に多く使われたというのも、人間を描く上で喜怒哀楽は永遠のテーマであり、とくに怒りは人生を狂わせたり進ませたりするモチーフであるからかもしれません。

「業腹」の漢字の意味

「業腹」という漢字を目にするだけでも、腹部が熱くなるようなイメージが湧いてきませんか?それもそのはず。罪深い人間を地獄で焼く火のことを「業火(ごうか)と称しますが、「業腹」は、その業火が腹の中で燃え立つという意味をもつ言葉なのです。

きわめて強い怒りを「はらわたが煮えくり返る」と表現しますが、業火が腹にあれば、はらわたが煮えもするでしょう。

「業」は、仏教用語としては深い意味をもつ言葉です。基本的に人の善悪の行為を指し、その報いは来世にも表れるという思想もあるほどに、重層的な言葉です。

「業腹」の使い方

「業腹」のもともとの意味は、きわめて強い怒りですが、実際に使われる場合、その怒りのレベルはかなり広い幅をもっています。

「しゃくにさわる」「いまいましい」という意味をご紹介したとおり、「業腹」は、つまりは怒りという感情全般を表現する言葉と考えてよいでしょう。

「業腹」は、「業腹な表情」「業腹だ」などのように用いられる名詞・形容詞です。「業腹を据えかねる」という言い回しもあります。

現代日本の会話で耳にすることはほぼ無い言葉ですので、文例は、昭和なかばの小説の登場人物たちの台詞というイメージで読んでみてください。

(男その一)

俺を影で侮辱している奴に物を言うのも業腹だから、口もきかずに無視して立ち去ったのだ。

(男その二)

太郎はあの事件のことで俺に恨みを抱いている。俺にも非難されるべきところはあったのだが、挨拶もせずに背を向けるその業腹な態度は許しがたい。

(女その一)

あなたさまが平気でほかの女のもとへゆかれることが業腹ゆえに、私はあの日、あの女の着物を燃やしたのですよ。

(女その二)

夫と激しく言い争ったあとも業腹でなりませんでしたから、しばらく実家に戻っていたのです。

「業腹」の類語

立腹

「立腹」(りっぷく)とは、読んで字のごとく、腹が立つこと。すなわち、怒りを覚えるという意味です。

きわめて強い怒りを覚えるとき、そのストレスで胃が収縮することで、胃が若干立つようなかたちになることがあるそうです。そのことから、強い怒りを、腹が立つと称するようになったという一説があります。

【文例】恋人である五郎の裏切りに立腹した由美は、脱いだ靴を五郎に投げつけ、その場に座り込んだ。

激怒

「激怒」(げきど)とは、こちらも読んで字のごとく、激しい怒りを指します。立腹よりもさらに怒りの度が強い状態です。

【文例】得意先への部下の非礼な行動に激怒した佐々木課長は、身を震わせながら部下を怒鳴り続けた。

腹に据えかねる

「腹に据えかねる」(はらにすえかねる)は、怒りを抑えきれないこと、怒りを我慢できない状態を意味します。

【文例】本来外国の子供の祭りにすぎないハロウィーンだが、昨今の日本の若者がはしゃいだあげく騒動まで起こす事態は腹に据えかねる。

まとめ

時には業火を腹で燃やすような怒りを抱えることもあるでしょう。とはいえ、強い怒りを持ち続けることは、自らの心身も痛めつけてしまいます。怒りはさっさと解消して、もてるエネルギーは人生を前に進める燃料として使いたいものですね。


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