「漁夫」とは?意味や使い方をご紹介

「漁夫」は、現代ではほとんど使われませんが、漁師を意味する言葉です。見聞きする場合は、「漁夫の利」という故事成語によることが多いのではないでしょうか。今回は、「漁夫」の意味やその仕事、そして「漁夫の利」についてを解説いたします。

目次

  1. 「漁夫」の意味
  2. 「漁夫」の仕事
  3. 「漁夫の利」とは

「漁夫」の意味

「漁夫」は古めかしい言葉ではありますが、「漁」という文字そのままに、漁師を意味します。漁業に携わる人を指しますが、「漁夫」には「夫」が用いられていますので、男性の漁師ということになります。

「漁夫」や「漁師」は存在しない?

「漁夫」「漁師」は一般的な日本語として用いられていますが、国が定めている漁業法においては存在しない言葉であることをご存知でしょうか。

同法では、「漁業を営む者」を「漁業者」「漁業者のために水産動植物の採捕または養殖に従事する者」を「漁業従事者」と定めています。さらに、それら個人のことは「漁民」と定義しています。法制上の言葉ですから、ちょっと堅苦しいですね。

「漁夫」の仕事

漁夫、すなわち漁師(漁業従事者・漁民)の仕事には、大きく分けて三つの形態があります。

  • 近海漁業(日本の漁師の多くが従事する形態。通常は、漁に出た当日か翌々日には帰港)
  • 遠洋漁業(数か月以上の漁となることが多い)
  • 養殖業 (魚介類、海藻類などを、養殖棚をつくって育てる)

「漁夫」の減少

漁業は、なんといっても自然が相手の仕事です。魚群に遭遇できないこともあれば、海が荒れると船を出すことさえできません。収入に安定性がないのです。そのうえ、重労働や危険もともなう厳しい仕事

そのような背景もあってか、漁業に携わる人は年々減少しています。水産庁によると、1953年の約80万人のピークから減少傾向となり、2017年には、なんと15.3万人にまで落ち込んでいます。

漁業従事者の高齢化も進み、約3分の1が65才以上であるのに比べ、25才未満は約3.6%となっています。たとえ、他業種から漁師になることを志す者があったとしても、漁業権を得るプロセスがきわめて煩雑であることも、新参漁師が増えない理由として指摘されています。

島国に生きる日本民族は、古来より魚を好んで食してきました。漁業の停滞は、国民の食卓にも大きな影響を及ぼす可能性がありそうです。

「漁夫の利」とは

「漁夫」という言葉をもっとも見聞きするのは、故事成語の「漁夫の利」によってではないでしょうか。いまだに様々な場面で使われる言葉ですので、詳しく解説いたします。

「漁夫の利」の意味

中国のいにしえの書物『戦国策』に出てくる挿話が、この中国故事成語の由来となっています。端的に言えば、二者の争いを傍観していた第三者が、苦労せずに二者(利益)を手に入れることを「漁夫の利」といいます。

「漁夫の利」の語源

元となる話を紹介しましょう。中国の戦国時代、趙という国が、燕という国の討伐をくわだてていました。それを知った遊説家(ゆうぜいか)の蘇代は、燕を守るために、趙の王を訪門しました。

蘇代は、途上でシギとハマグリの争いを見たと、王に伝えました。「シギが、くちばしでハマグリの身をついばもうとすると、ハマグリは両の殻をぴたりと閉じ、シギのくちばしを挟み込みました。両者とも、争ったまま身動きがとれません。そこにやってきた漁師が、シギとハマグリを捕まえてしまいました」

「漁夫」は、いとも簡単に、争う二者を得たわけです。このことを引き合いに、蘇代はこう続けました。「趙と燕が争って、双方の民衆が疲弊したとき、漁夫がシギとハマグリを捕えたように、大国の秦が二つの国を討ってしまうかもしれません。どうか、よくお考えのほどを」

趙の王は、その説得を受けいれ、燕を討つことをやめました。ここから、「漁夫の利」という故事成語が誕生したのです。

「漁夫の利」の意味の変遷

もともとの「漁夫の利」は、争いで疲弊して、傍観の大国にまざまざと討たれることがないように、という忠告です。

しかし、いつのまにか、労せず利を得ることのほうに視点が移ってしまったようです。今では、「ちゃっかりおいしい思いをする」ことを「漁夫る」とたとえる若者言葉さえ生まれました。

様々な問題から日本の「漁夫」が減っていくなか、魚介類の対日輸出で「漁夫の利」を得る国々が増えるかもしれません。日本の漁業に、かつての繁栄を取り戻してもらいたいものです。


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