「あなや」とは?意味や使い方をご紹介

高校の古文の授業において「あなや」という古単語が出てきたことを覚えていませんか?なんとなく聞いたことがあるという方や、今まさに古典の授業で習っているという方もいるでしょう。そんな方たちに、「あなや」の意味や使い方を詳しく説明します。

目次

  1. 「あなや」の意味
  2. 「あなや」の語源
  3. 「あなや」の正しい使い方
  4. 「あなや」の漢字表記一例
  5. 「あなや」は断末魔の一つ?
  6. 「あなや」のまとめ

「あなや」の意味

「あなや」とは、古語です。平安時代ごろに使われていたもので、ひどく驚いた時に発する言葉です。叫び声のことですが、「あれっ」「ああ」などど現代語訳されます。

「あなや」の語源

「あなや」の成り立ちについて解説します。喜怒哀楽いずれにも用いられる「ああ・おやまぁ」という意味の感動詞の「あな」に、間投助詞「や」が付いたものです。

感動詞とは?

話し手の感動を表す「ああ」「おお」の類をはじめ、呼びかけを表す「おい」「もしもし」の類や、応答を表す「はい」「いいえ」など、をさします。

「あな」の使い方

  • 「あな~や」…あぁ、~ことだ!、まぁ、~だわ!
  • 「あなかま」…あぁ、やかましい
  • 「あなう(あな憂)」…ああいやだ!

「あな」が感動詞で「ああ」と訳すので、これらの言葉も派生して覚えておくといいですね。

「あなや」の正しい使い方

平安時代に成立した伊勢物語(芥川という章段)に、以下のような一文があります。
 

鬼、はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。
(鬼が、あっとゆう間に一口で女を食べてしまった。女は「あーれー。」と叫んだが、雷の鳴るやかましさで聞こえなかった。)

これは、長年求婚していたが身分の違いで叶わなかった男が、その姫を盗み逃げる途中の話である。夜も更けて天気も悪かったので、たまたま見つけた荒れ果てた蔵に鬼がいることも知らないで女を押し込めていたが女は鬼に食われるという話です。

近現代文学に見られる例文

一人あなやと叫びてその手を執りぬ。
(一人はあっと叫んでその手を取った。)
                           (国木田独歩『思想』)
 
少女はあなやと叫び、物に驚きたる牡鹿の如く、瞬く隙に馳せ去りぬ。
(少女はきゃあと叫び、物音に驚いた牝鹿のように、一瞬の隙に走って去ってしまった。)
                           (森鴎外『即興詩人』)

「あなや」の漢字表記一例

啊呀・呀嗟・呵呀・咄嗟・哬呀と表記されることもあります。

咄嗟は「とっさ」とも呼び、ごくわずかな時間を表します。とっさに出た驚きの言葉からきているのでしょう。

その他は現代人にはなじみがなく、読めないですね。

「あなや」は断末魔の一つ?

「あなや」は現代で言うと、「うわぁぁぁ」(驚き)や「ぎゃぁぁぁ」(断末魔の叫び)であったり、悲鳴や叫び声と捉えたほうがわかりやすいでしょう。

断末魔とは状態を表す言葉で、その意味は人間が死ぬ直前の状態のことなのです。息を引き取る瞬間そのものが「断末魔」であり、「断末魔の叫び」となると、その時に上げる声のことを表すのです。

「あなや」のまとめ

このように見てみると、叫び声であるのに、「あなや」とはいかにもおしとやかな印象があります。特に、様々な文献を見てみても、女の人が「あなや」と叫ぶ場面しか出てきません。

伊勢物語を見てみても、自分が食べられる寸前に叫んだ言葉が「あーれー。」と表現されています。現代では少し想像しにくい音声ですよね。

このことから、昔の女性はとても控えめであったことが伺えるのではないでしょうか。


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