「対義語」とは?意味や使い方をご紹介

国語や英語の問題で「対義語(英語ではantonym)」が出題されることがよくあります。明白な対義語もあれば、一見なぜそれが対義語なのか分かりにくいものもあり、考えるときには少し注意が必要です。ここでは、そんな「対義語」を掘り下げ、解説していきます。

目次

  1. 「対義語」とは
  2. 対義語の分類
  3. 「意味が反対の言葉」が対義語とは限らない

「対義語」とは

「対義語」の「対」は「対照」の「対」であり、「義」は「意味」を表す漢字です。対義語の知識はよく国語のテストや英語のテストで問われますが、日本語や英語に限って存在するものなのではなく、どんな言語においても存在するものです。

英語では「antonym」

なお、英語では「対義語」のことを「antonym」と言います。太宰治の『人間失格』の中で、「黒のアントは」という一節がありますが、この「アント」は「antonym」の略語です。

ちなみに、同作の同じ場面に「シノニム」という言葉も出てきますが、これは英語の「synonym」であり、それは「同義語・類義語」のことです

対義語の分類

ひとことで対義語といっても、細かく見てみると、その組み合わせの性質を分類することができます。次の三つの例を見てください。

  • 右-左
  • 大-小
  • 善-悪

方向の対照性

まず、「右-左」は方向が正反対だという意味で対照的な言葉の組み合わせです。これと同じような組み合わせとしては、「前方-後方」「北-南(東-西)」「天-地」「上手(かみて)-下手(しもて)」などが挙げられます。

物理的量の対照性

次に、「大-小」は、物理的な量に関する対照性です。この仲間に入るものとしては、「長い-短い」、「厚い-薄い」、「広大-狭小」、「莫大-僅少」などが挙げられます。

性質の対照性

そして三つ目の「善-悪」は、性質に関する対照性の例です。ほかに「美しい-みにくい」「面白い-つまらない」、「安全-危険」、「裕福-貧乏」などがあります。

いま挙げた三種の例は比較的分かりやすい対照性を持つ言葉の組み合わせですが、他にもさまざまな観点で対義語を分類できるでしょう。

「意味が反対の言葉」が対義語とは限らない

以上の三種の類義語の例では、どれも「意味が反対な言葉の組み合わせ」だと考えられます。しかし、対義語の中には、「意味が反対」という認識では理解しきれない組み合わせもあります対義語を考えるときには、あくまで「対照的な意味の組み合わせ」と理解しておく方が良いでしょう

「姉-妹」を例に

たとえば、「姉-妹」といった言葉の組み合わせを考えてみてください(なお、「姉-妹」は「兄-弟」でも「姉-弟」でも「兄-妹」でも構いません)。

ある二人姉妹の関係においては、姉である者が何らかの属性を失うか減じることによって妹になるということはありません。また逆に、妹である者が何らかの属性を得ても、この二人の関係の中では姉になることはできません

姉妹のうちの一方が姉であり、もう一方が妹であるのは、お互いの存在があることで成り立つものです。もともと姉がいなければ、そこに妹と呼べる人物は存在しません。一人娘がいるだけです。

逆に言えば、妹という存在がある限り、それとの関係においてもう一方は姉であり続けるでしょう。どちらか一方が存在しなければ、他方は存在し得ないし、どちらかが存在していれば、必ず他方も存在しているのです

対義語=お互いに規定しあう関係にある言葉

つまり、姉は妹の存在によって「姉」として規定され、妹は姉の存在によって「妹」として規定されているということです。ここに成り立っている関係は、反対というものではなく、対照性と呼ぶべきものです

この「姉-妹」のほかにも、反対の意味の組み合わせではなく対照的な言葉として解釈した方が、対義語として分かりやすいものは様々にあります。たとえば、「男-女」、「単数-複数」、「需要-供給」、「権利-義務」、「精神-肉体」などが挙げられます。

反対は対照にふくまれる

対照と反対は一見よく似ていますが、必ずしも同等ではありません。むしろ、反対の関係にあるものは対照的であるとみることもできるのですが、その逆は必ずしも成り立たないので、反対は対照に含まれると考えられます。

だから、先に挙げた三種の対義語の組み合わせも、相互規定する対照関係として解釈することができます。右がなければ左もありませんし、大なるものは、それよりも小なるものとの比較によって大たり得ます。また、この世に悪行がなければ善行も善く見えないでしょう。


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