「いざ知らず」とは?意味や使い方をご紹介

文章などで目にする「いざ知らず」という言葉。正確な意味を知らない方も多いのではないでしょうか。「いざ知らず」は、簡単に言えば、「・・・はどうか知らないが」という意味の言葉です。今回は、この言葉の詳しい意味や成り立ち、そして例文をご紹介します。

目次

  1. 「いざ知らず」の意味
  2. 「いざ知らず」の成り立ち
  3. 「いさ」とは?
  4. 「いざ知らず」の例文
  5. 「いざ」から始まる言葉

「いざ知らず」の意味

「いざ知らず」という言葉は、「…はいざ知らず」という形で使われます。その意味は、「…はどうか知らないが」や「…はともかく」というものです。

より日常的な言葉で言えば、「…はさておき」や「…は別として」という意味で使われています。

「いざ知らず」の成り立ち

さて、「いざ知らず」という言葉の成り立ちを考えると、違和感を覚える方もいるかもしれません。というのも、「いざ」というのは、普通「いざ、行こう」のように、物事を始めるときなどに使う「さあ」という意味の感嘆詞です。どうして、「いざ」+「知らず」で「…はどうか知らないが」という意味になるのでしょう。

実は、「いざ知らず」は、元々「いさ知らず」という言葉だったと言われています。そして、この「いさ」と感嘆詞である「いざ」とを混同してできたのが「いざ知らず」という言葉だそうです。

「いさ」とは?

それでは、そもそも「いさ」とはどういった意味の言葉なのでしょう。古語としてご存知の方もいるかもしれませんが、「いさ」は、「知らず」を後ろに伴う形で使われていた副詞です。「いさ~~知らず」という形で、「さあ、どうだろうか」という意味を持っていました。主に、相手の言葉に否定的な返答をするときに使われます。

有名な使用例としては、『古今和歌集』に収録されている紀貫之の一首が挙げられます。
 

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

百人一首の三十五番としても有名な和歌です。簡単に現代語訳すると、「人の心というものは、さあどうだか知りません。けれど、この慣れ親しんだ土地の梅の香りは、昔と変わらずに素晴らしく香ってくるものです。」という意味になります。梅の花が香り立つような風情のある和歌ですね。

このように、「いさ知らず」は、「さあ、どうだろうか」という意味の言葉でした。そして、「いさ」が「いざ」と混同されて、現在の形になったと考えられています。

「いざ知らず」の例文

次に、「いざ知らず」の使用例をご紹介します。

  • 「子供ならいざ知らず、いい大人がみっともない」
  • 「他の人はいざ知らず、私には許せないことだった」
上の文は、「子供であればともかく、いい大人がみっともない」という意味です。下の例文は、「他の人はどうか知らないが、私には許せないことだった」という意味です。

このように、「…はいざ知らず、~~」という形で使われ、後ろの「~~」の部分を強調する意味合いで使われることが多いようです。

「いざ」から始まる言葉

最後に、「いざ知らず」と同じく「いざ」から始まる言葉をご紹介します。

【いざ鎌倉】
この言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、能における「鉢木」という謡曲に由来する言葉だと言われています。元々は、「さあ、鎌倉幕府に一大事が起こった。馳せ参ずべきときだ」という意味でした。これが転じて、現在は、「さあ、大変だ」「一大事が起こった」という状況を指す言葉として使われています。

【いざさらば】
「仰げば尊し」の歌詞の一節としても有名な言葉です。実は、「いざさらば」には二つの意味が存在します。一つは、別れの言葉としての「それでは、さようなら」という意味です。そして、もう一つは、特に古語として使用される場合に、人を誘ったり、行動しようとしたりする時の「さあ、それならば」という意味があります。

【いざと言う時】
「いざと言う時に頼りにならない」といった形でよく耳にする言葉かもしれません。こちらは、「さあ」というとき、つまり、「事件や一大事が起きた場合」という意味です。

このように、「いざ」から始まる言葉は「いざ知らず」を始めとして多くあります。「いざと言う時」に使い間違えないようにしましょう。

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