「山紫水明」とは？意味や使い方をご紹介

「山紫水明」とは、山が紫にかすみ、川が澄み切って清らかであること。または、景色が美しいさまです。


この言葉の美しい風景のイメージからホテルの客室名に、澄んだ水のイメージから焼酎の名前に使用され、そのほか、お香やお線香、毛筆、果ては、競馬馬、二次元アイドルのユニット名にも使用されています。
 

「山紫水明」の出典は、以下の頼山陽の漢詩「題 自画山水」からです。
 

頼山陽（1780~1832年）は江戸後期の儒者、歴史家、詩人で、画家でもありました。幕末の尊王攘夷の思想にも強い影響を与えた『日本外史』を著しました。これは源平から徳川までの武家の歴史を描いた軍記物に近いもので、必ずしも史実に忠実ではなかったのですが、当時のベストセラーになりました。

• 山紫水明とは、平生唯文字上に知りて、晩方になれば、水があかるくなるならむ位に思ひたるが、今はじめて、實際見て、その妙趣を知りぬ。『水明』とは、言ひ得て妙なるかなと、ひそかに感歎す。（大町桂月・國府臺）
• 然るに今日の農民は、美しい自然の中に生活しながら、其れを享楽することが出来ない。山紫水明の勝地は傷ましくも悉く都会のブルジヨア、金持達の蹂躙する処となつて、万人の共楽を許さない。（石川三四郎・吾等の使命）
• 山紫水明、あまつさえ四囲に青海をめぐらして、気候の調節的温和なること、地味の肥沃なること、いずれの点より見るも、これが生物によっては優れた自然天恵の日本であることが分る。（北大路魯山人・味覚の美と芸術の美）
• 山紫水明のミラノと云う。然しここには、水もなければ山もないおまけに樹木もない。（横光利一・欧洲紀行）

• 水紫山明（すいしさんめい・山紫水明の同義語）
• 山光水色（さんこうすいしょく・山水の美）
• 山容水態（さんようすいたい・美しい山の姿や水の様子）
• 嵐影湖光（らんえいここう・山に立ち込める精気と光る湖面の美しさ）
• 水天一碧（すいてんいっぺき・水と空が一体となって青々としている）
• 花紅柳緑（かこうりゅうりょく・春の美しい景色）
• 風光明媚（ふうこうめいび・景色が美しく澄んでいる）

英語では「山紫水明」は直訳せず、以下のように「美景」の意味で表現します。

• ‘Sanshisuimei’ means scenic beauty.（山紫水明とは景色の美しさを意味する。）
• After a long voyage, they finally reached a land of beautiful scenery.(長い航海の後、とうとう彼らは絶景の土地に着いた。）
• The place is noted for its outstanding natural beauty.（その場所は傑出した景色で有名だ。）

「山紫水明」以外にも自然や季節を表す四字熟語はたくさんありますが、「山紫水明」という言葉の響きと意味がとても良いせいか、今日でも愛され、いろいろな場面で使われています。この言葉を造り出したと言われる頼山陽という人は本当に才人ですね。